私の好きな作品~『ひとがた流し』
北村薫さんの連載小説で、これを原作としたテレビドラマ化したものに私は何故かとても惹きつけられたので、ここで紹介しようと思います。
ご存知の方も多いと思ったので部分的な書き方になってしまいますが。
ヒロイン・千波は、テレビ局のアナウンサーとして仕事一筋に30
代を駆け抜け、40代という人生の折り返し地点を迎えた。ニュース番組のメインキャスターという長年の目標に手が届く直前に、病に倒れた千波を、幼なじみの親友・牧子と美々が懸命に支えていく。フリーライターの牧子。写真家の妻になった美々。二人はそれぞれ、離婚・再婚・出産・子育てという人生の紆余曲折を経験しながら、千波とは変わらぬ友情を育んできた。二人に支えられながら、病と闘い、必死に生きる千波。仕事への執念。後輩ディレクターとの愛。そんな千波の姿は、牧子と美々にも、それぞれの人生に正面から向き合う勇気を与えていく…。(NHKドラマより)
お互い中高生の時に知り合い、ずっとべたべたするのではなく、離れすぎずいい関係ですごしてきた歳月・・・「友情」という言葉ではこぼれ落ちてしまうような、お互いに対する思いがたくさん詰まった作品です。
夫婦が人生を一緒に歩いていく仲間であるとしたら、女同士の関係というのは、ずっとつかず離れずの位置にいながらいつも心を開いて受け止め合える関係・・・同士と呼んでも過言ではないと思います。「女の友情なんてもろいもの」と世間ではよく言われますね。でも、一度相手を信じたらとことんつき合う、相手を見ることがまるで鏡を観ているかのように・・・だからほっとけない、言いたいこともポンポン言い合えるのでしょう。
描写のひとつひとつの積み重なりが、登場人物たちがともに生きたということそのものにしたと思います。そして、そのエピソードを丹念に読んでいくと、そのことの重さと意味が読む者の心にじわじわじわと染み渡ってくるのです。
最後に好きな人と女としていい時間をすごせた千波の一生・・。人生にはそれぞれの時間があって、母から娘に受け継がれる思いがあって、それは川に流れるように過ぎ去っていく・・・川に流れるたくさんの「ひとがた」は、それぞれの願いをのせて流れていく・・・。
人生は流れに浮かぶ木の葉のようにはかないけれど、それぞれが愛しい大切なもの。そんな当たり前だけれど、当たり前でないことを感じることができました。
自分の感情を押し出す前に、この築いた関係において 今大切な
ことは何かを問うことが出来るのは、人間として見習いたいところですね。人間が最後まで忘れてはならないものだと思います。
誰も教えてくれない、目に見えない本当の“絆”というものが見えてくるような気がしました。
限りある身であるから、人間は、否応無しに大切な誰かとの別れを体験するでしょう。その時、その人と過ごした時間を一緒に持って行ければ・・・。自分の何分の一かが消えてしまうような喪失・・・。だからこそ、消えても残る、その人との繋がりを確認することがとても大事なのでしょう。
この物語に書かれた内容の多くは、実際の体験から生まれています。それだけにつらく、また大事な一冊です。
40代を迎えた彼女達にとって友達とは何かを考えた時、こんなに深く結びついた友情があるだろうかとつい自分のことを振り返り、はっとさせられます。
でも友情はこんなにも深く、でも切ないのだとしみじみ思いました。『転がる石にはコケはつかない』、転がりながら成長していく友達や家族について考えるための作品でした。
| 固定リンク | コメント (5) | トラックバック (0)






















最近のコメント