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2009年2月 3日 (火)

私の好きな作品たち~寺内 小春編

 私がまだ脚本家についてよく解らなかったとき、小春さんと向田さんの区別がつきませんでした。その原因となったのが『麗子の足』というドラマでした。これは原作が向田さんで脚本は小春さんだったんですね。向田さんの色をそのまま出してくれたので、なんの違和感無く観られたドラマでした。

 主人公は、女学校の教師で三人姉妹の長女、礼子。ニ・ニ六事件で自決する、いとこで軍医の総一郎との悲恋が描かれています。
幼い頃から近い存在で、互いに好意を抱きながら年齢を重ね、そKaii007 れでも最期まで相手への想いは口にしない。教師・長女・軍医・いとこ、という互いの立場を意識するがゆえに。やがて、総一郎がニ・ニ六事件に加わってしまったがゆえに・・・互いの想いをを伝える時間を失ってしまう・・・

画面からは、互いの心情があふれているのに、そうしたセリフがありません。

素足の「麗子像」を前にして、二人が互いに足袋を脱ぎ、足を見せあう。日本人は下駄の鼻緒をはさむから、二本の指は離れている。
お互いいとこだから、足の形が似ている。同じ血が流れている。と繋がっていくセリフは、ここで留まります、そして事件当日、二人は結ばれると思いました。裕子さんが長嶋さんにもたれかかって片足を少し上げ、足袋を脱ごうとするのです。そこにに・2.26の関係者がずたずた入ってきて・・・裕子さんの足袋はぬぐことも履く事も出来ない・・・
このクライマックスシーンが、互いの熱い想いを強く伝えていて、なお哀しく映りました。

女性の大切な気持ちがぶつっと切れた瞬間って、いえ、お互いの気持ちや立場がわかっているからああいうクライマックスになったのでしょう。向田作品もなかでも忘れられない作品です。

 『イキのいい奴・ 』も向田邦子賞受賞作品ですね。
 時代設定は、ALWAYS・・・まさしく、昭和27~28年頃の東京の下町を舞台にしたドラマでしたが、冒頭のセリフを言った松尾嘉代さんの役は、少し、年齢不詳気味でしたが、夫役の若山富三郎さんが、60前後といったところでしたから、50歳くらいだったでしょうか。 祖母の年代でしょうか、思えば、その時代、その年齢の人は、それまでに、死ぬほど涙を流してきてるんですね。
まさしく、今のイラクやアフガンと一緒で、我が子の死を見、友人知己の死を聞き、家を焼かれ、食べるものもなく・・・。
ドラマではそこまで言ってませんでしたが、言わないのが当たり前で、誰もが経験している当たり前のことなのですから、わざわざ、取り立てて言うようなことではなかったということでしょう・・・。
一方で、主演の小林薫さんが演じた寿司屋の親方にも、その時代の空気が感じられましたよ。 思えば、うちの祖父などがそうだったような気がします。 そう、いわゆる、「昔気質」というものですね。
 そういった人間模様を通して、かつて、この国にあった古き良き時代を見事に描ききったという点で、こういったノスタルジーものの中では、傑作中の傑作と言ってもいいのではないかと思っています。

 寺内さんというと、NHKの『はね駒』を思い出される片のほうが多いかもしれませんが、『思い出トランプ』や『男どき女どき』なども寺内さんの脚本でした。演出は、あの(と言っても解らないですね。向田作品を多く手掛けた方です。)久世光彦氏で今はDVDが多く出ています。このような私的なドラマがどんどんDVD化してくれる事は嬉しい事です。以前は映画が殆どで素晴らしいドラマは観ることができませんでしたから。『虞美人草』の脚本も寺内さんだったのですね。夏目漱石作品はまた今の視点でドラマにして頂きたいと思います。出来れば寺内さんの脚本で・・・

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