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2009年3月21日 (土)

私の好きな作品たち~矢作 俊彦編

 70年代を通じ短編小説、漫画を手掛ける傍ら、ラジオ・TVドラマの構成作家としても名を成し、日下武史による長編朗読劇『あいつ』(FM東京)で特に高い評価を得た矢作さん。   

 1977年 初の長編小説『マイク・ハマーへ伝言』を上梓、日本人ばなれしたスタイリッシュな、ハードボイルド小説の旗手として、注目を集める。1980年には、漫画界の新星大友克洋との共作『気分はもう戦争』を漫画アクションに連載開始(単行本刊行は1982年)。当時、気鋭の作家同士のコンビとあって話題ともなり、現在でも読みつがれるロングセラーとなっています。

 1980年代には、単独作及び司城志朗との共作で、ハードボイルGc087 ド作品、冒険小説、カー・アクション小説などを発表。また、漫画家谷口ジローさんとも、「マンハッタン・オプ」シリーズの挿絵担当、共作漫画『サムライ・ノングラータ』などでコンビを組んでいます。1997年の大作『あ・じゃ・ぱん!』は、偽現代日本史として、また世界の文学作品のパロディを縦覧網羅した奇書として、福田和也氏(『作家の値うち』では90点)や?秀実(『ららら科學の子』を凌ぐ怪作)など批評家から高く評価されました。同年より「文学界」に連載した『ららら科學の子』は、米国における同時多発テロの影響で執筆中断を余儀なくされたが、2003年に刊行。やはり福田和也が週刊新潮の「闘う時評」で激賞し、朝日新聞「回顧2003 文学」の「私の3点」に挙げるなど読書界の話題を浚いました。

  司城志朗氏との共著『暗闇にノーサイド』はインドシナで紛争に巻き込まれクメール・ルージュの捕虜となったタツヤはスパイと疑われてホォ・グァン将軍によって拷問を受ける。その後、大金を手に入れたタツヤがホォ・グァン将軍に復讐する物語。クメール・ルージュが跋扈したカンボジアから始まり、一路香港、フランスへと舞台を移す、長い復讐の旅路。
 
 特筆すべきなのは、その国際背景を舞台にしつつ、諧謔を飛ばす登場人物達で、特に主人公を助け、最後の戦いまで付き添う傭兵、ジョウ・ラミレス・モルテスのカッコよさときたら!。ガバメントを手に「拳銃が俺のパスポートだ」とか言うのだから、モデルは一発でわかりますよね(笑)。また、ヒロイン?である、蘇・海鈴(アイリーン)も魅惑的な美しさと影の持ち主です。でも、そういった背景だけではなく、例えば脇役の登場人物にすら、いささか冗長ともいえる生い立ちをインサートする。その生い立ちに関わる歴史的事件を把握していればしているほど、この物語の深みというのがわかるでしょう。ちなみに客家、OASについては初めてこの小説を読んでから知った口。ラストの仰々しい仕掛けっぷりは・・・ここは読んで頂きたいです。
 
 冒険小説といえば、古今色々な作品があるますがその中でいまだに読み返す回数の多い冒険小説に、矢作俊彦氏と司城志朗氏の合作で送り出された『暗闇のノーサイド』『ブロードウェイの戦車』『海から来たサムライ』の三作があるほど有名ですが、実は私は知りませんでした。

『ブロードウェイの戦車』は、前作で主役を喰いかけていたジョウ・ラミレス・モルテスの元上官の死から始まります。ジョウの過去であり、傭兵達の栄光の場所であったアフリカのコンゴ動乱についてある程度知識はいるでしょう。そして、舞台は、ニューヨークのマ
ンハッタンへ。相手はイギリス、ソビィエト、アメリカ、そして大企業。ジョウは亡き上官が果たせなかった作戦の発令書を手に、かっての仲間達へ声をかけるのですが・・・
 元々タイトルからして、矢作俊彦の短編集「ブロードウェイの自転車」から取られていますが、この作品でもお遊びは随所にある(例えば、シングルアクションのコルトをファニングするジョウとか。どこがお遊びなのか、知らない人はこの作品の肝心な部分の面白さが
わからないかも・・・)、アーパ・ネット(インターネットの前身)が出ていて吃驚としましたね。

1984年当時、ちゃんとネットでの検索シーンを出していたとは。また、MP5SDをメインアームズにしようとするくだりもあります。(作中では、出たばかりで、マック11で我慢しろといわれていますが)。古式ゆかしい。というわりには当時の最新のガジェットは出てきていたのだ。しかし、テーマにも関わりますが、どこかノスタルジックさ加減が漂う物悲しさがあり、最後のラストシーンまでの流れるような展開は見事です。

 『海から来たサムライ』は、それまでとは違って時代を遡って、明治時代の日本、日清戦争を前夜に、畏こき方からの命もあって、動乱のハワイへ向かう元海軍士官の鹿島丈太郎が主人公です。この物語も、随所にお遊びが出てきますが、洒落にならないのはそのお遊びのヒネくれ具合。でもそういう部分も差し置いても、出版時期から察するに、かなり先取りしている話題が多いと思います。例えば、物語の最初と最後に出てくる海軍「浪速」艦長の、東郷平八郎や、陸奥宗光。そして、主人公達を助ける博覧強記でありながらメカにはまるでダメな南方熊楠。最初読んだとき、ネタ?と思っていましたが数年後の熊楠ブームで吃驚!だとは、1980年代です。そんなに知られた人物?作者らの先見というべきなのでしょうか。また、ハワイのダイアモンドヘッドの要塞に仕込まれたモノとか、初めてのサーフィン。真珠湾でヒロインがつぶやく台詞など、随所に色々なネタが満載でした。

 『マンハッタン・オプI』は、きっとそれなりに皆さん好みがあると思いますが、ここまで短編でやるとは!本当にびっくりです、とてもクオリティが高いと思います。
『ハードボイルドする』のは、簡単そうに見えてかなりの高度なテクニックが必要です。ただの1人よがりの1人称では到底醸し出せない直接語らない重要な何かを読者に響かせなくてはハードボイルドできないからです。そのため、どうしても情報量として分量が多くなります。ですから有名なハードボイルドは長い小説が多いと私は思ってます、トリックも、伏線も、背負う傷も、最初の巻き込まれ方、「私」のスタイルも、お酒も、様々な手垢がついているとしても、そうする事でしかなかなか『ハードボイルドする』のは難しいからです。 つまり、その世界に、『読者』を巻き込める、読ませるチカラが無い限り、客観性が『ハードボイルド』させてくれなくなってししまうのです。 それを、短編で!やるなんて、相当技術がないと出来ないと思いますが、もう見事です。

 『サムライ・ノングラータ』もお勧めです。ハードボイルドだど!!

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コメント

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投稿: ニューバランス 998 | 2013年11月 2日 (土) 11時22分

初めておじゃまします。
わたくし、最近「きょうのあらかると」というココログを立ち上げましたKOZOUともうします。

たくさん読んであるようですね。
わたしも下手な小説とかもアップしております。

時々寄らせていただきたいと存じます。
もしよろしかったらわたしのブログものぞいていただければ幸いです。

投稿: KOZOU | 2009年3月21日 (土) 14時32分

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