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2009年3月20日 (金)

私の好きな作品たち~高嶋哲夫編

 サントリーミステリー大賞を授与したときから富み始めたので、読むう順番が逆になってしまったのですが、魅力的な作品を書いていらっしゃる方です。慶應義塾大学工学部卒業、大学院修士課程修了。 日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。帰国して学習塾を経営しつつ、小説を書いていました。

 1990年 - 『帰国』で第24回北日本文学賞を受賞。
 1994年 - 『メルトダウン』で第1回小説現代推理小説新人賞受賞。
 1999年 - 『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。

と年々実力を発揮している高嶋さん。『イントゥルーダー』では。真相追求の過程で,知らなかった息子の人間像が浮かび上がってくる・・・交通事故に合って瀕死の状態に陥っている息子の存在が突然明らかになった、スーパーコンピュータ会社の副社長、羽嶋。息子の事故原因を追求する過程で、徐々に明らかになる原発建設の裏。
さすがに、原発研究者の作品だけあって、原発にかかるディーテールはしっかりしていて。妙に絵空事のような感じがしないのには感服しました。原発建設は膨大な利権がからむため、これに群がる勢力が多数存在します。中には、工学的正論をも排してそれを食い物にするきわめて厄介な勢力が存在します。工学的正論を得た主人公と「極めて厄介な勢力」との暗闘がこの小説の筋書きです。
 

  高嶋さんはは原子力工学を熟知しており、現存する原発に関し263kand て事実であるかどうかは別として、工学的見地での小説としての記述に間違いは無いのでしょう。問題は、この小説の筋書きがフィクションとして読み過ごせるのかどうかです。個人的な感想としては、小説の中に散りばめられた個々の事件は別としても、大枠の経緯や結果としての事実関係があまりにも酷似しており、今読み返してみると衝撃を覚えずにはいられません。

 『ダーティー・ユー』はまた違った背景があって、面白かった作品です。アメリカ生まれの帰国子女(?)で中学2年生の小野田雄一郎(YOU)が、経験する日本の中学校での経験。     彼のこれまでの経験は全てアメリカの習慣に基づいている。唯一例外なのは、母に教え込まれた家庭内の日本教育でした。米国式教育を受け、そういう友人と共に育ったYOUが、日本の中学校に放り込まれて、どう感じるのか、どう反応するのか? いじめられていた友人が、屋上から飛び降りて死んだ。やがて、YOUが弁護士を雇って、イジメ殺人事件の裁判を起こすというもので私の中では問題作です。

現在の日本では、高校生年代の凶悪犯罪が社会的関心を受けています。 2000年前半の例では、バットによる母親殺人、牛刀によるバスジャック殺人事件、近隣一家6人死傷事件と暇がありません。 日本の教育機関の中で、イジメが問題になってから久しく時が流れました。この本では、作者の米国での経験が反映されているものと思います。
 特に、イジメに対する防御方法をYOUは示しています。YOUは精神的に強い。 本文の中でも述べていますが、「いずれアメリカに帰るんだろう」を本人が認めたら、日本に根を張る中学生には理解しがたい行動なのでしょう。イジメのボス的存在「新藤」に対して、教室の椅子を振り上げて対向する。この行為によって、YOUはイジメの対象から外される。ここまでやらないと、イジメに対抗できないとすれば、体力が無い小柄な男にはイジメ対策は無いのでしょうか・・・高嶋作品なのですが、ミステリーではないもですが、テーマそのものが現代のミステリーですね。中学生、高校生に読んでもらいたいのですが、大人の人も読んでみて考えて欲しい1冊です。日本国内では気が付かない視点から、イジメ問題を根底からえぐる問題作です。

 『トルーマン・レター』も高橋さんの得意分野の電子力とは関係が無いように思われる作品ですが、私は割りと好きです。

 新聞記者を辞めて失業中の峰先は、J大学経済学部の河田雄一郎教授を訪れた帰り道で、公園で争っている外国人同士を止めに入った。その後、ふと手に取った雑誌の中から、1通の古ぼけた英文の手紙が出てきた。この手紙を手にしたことで、いざこざに巻き込まれたようで、何回も襲われた。手紙は友人の英文学者園田美弥子に託し、解読したところ、米国33代大統領ハリー・トルーマンが愛人に宛てた私信で、広島原爆投下の恐るべき理由が書かれていました。
 折りしも、現米国大統領のアルバート・チェアマンが8月6日の広島平和式典に出席するとが間近に迫っていた一方、沖縄米兵によるレイプ裁判で反米感情が高まっている中で、この手紙を公開したらどうなるか? 考えるのも恐ろしい、暴動的大統領非難が起こるのは目に見えていた。真実を公開することが正義か、自分の記事がきっかけで自殺した少女の面影がよぎる・・・と言う内容で女性にとっては屈辱的なレイプの恐怖シーンから始まりますが、テーマは単なる沖縄米兵問題ではありません。偶然手に入れた、インクが滲んだ古い手紙をコンピュータ技術で読めるまでに再現した手順や、サインを比較する鑑定方法など最新技術が活用されるなどの巧さがまたいい味を出していています。大統領訪米の直前に、この手紙を公開すべきか否か?真実の報道は正義と信じて自分が書いた記事が、結局は明るい女子高生を自殺に追い込んだ「報道する責任」と「報道した結果の責任」の板ばさみに合って、苦悩する峰先は、人間だなと実感しました。

 ここから先は、スピード感のあるアクションの連続で、ページを繰る指の動きが速くなります。こんな大胆なテーマを最後にどうまとめるのかと、他人事ながら心配していたら、国家のエゴ戦略の終焉と言うことになって、なんとなく納得。こういう考え方もあるのでしょう。
 作者によれば、この作品は5年程前にある賞に落ちたものを、どうしても世に出したくて、大幅に改変して出版したものだそうだ。その努力は、十分に反映されていると思います。

 理工系の作家さんの作品はは数字で割り切れる、割りと淡々としている風に私は思っていたのが、そうではないと確信させてくださったのが高嶋さんや東野圭吾さんでした。

  2000年に入ってからの作品はまだ残してあるので楽しみです。

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