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2009年3月24日 (火)

私の好きな作品たち~辻 仁成編

 私にはもう恋愛小説は・・・なんて思っていたら大間違いですね。いくつになっても恋心は持っていたいものです。そう思わせてくれた作家さんに辻さんがいました。中山美穂さんの旦那様といったほうが解りやすいでしょうか、それともミュージシャン?

 私は正直なところ、ミュージシャンだと思っていたので、作品と辻さんがどうもうまく繋がりませんでした。でも、『サヨナライツカ』を読んでミュージシャンのイメージは払拭されました。「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトとにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す」。“好青年”とよばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しくくるおしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で…。愛に生きるすべての人に捧げる渾身の長編小説です。

 この本は描写を超えて ふたりの主人公を感じることができます。 二人に訪れた遅すぎた運命の出逢い、切ない愛の契り、苦悩の中二人が選んだ 選択と決断、人生をかけた愛・・・ ふたりの様々な心情に、何とも言えぬ思いで胸が締め付けられました。
受け止め方は人それぞれだと思います。 「別れてしまってもこんなにも愛せる人と巡り会えて幸せだ。」 「こんなにも愛せる人と巡り会えたのに人生を共に歩めずに不幸だ。」 きっとその答えは、冒頭の『人間は死ぬとき・・・』を自分ならどう思うかで 違うのかもしれません。 女性側からの視点で見ると、豊をズルイ、卑怯と思う女性もいるかと思います。でも、沓子は愛しているからこそ自分の愛から開放し、彼の幸せを願った。 そこには束縛や嫉妬や計算、損得勘定もない、ただ沓子の深い愛だけが 存在していたのだと思います。 彼を愛し続けることに、想い出に生き続けることに人生を捧げた沓子は強く そして純真な女性です。
 簡単に出会いや別れを繰り返す希薄な男女関係が多い現代だからこそ、 若い方にもぜひ読んでほしいですね。
 もちろん、年齢を重ね心から誰かを愛し辛い別れを経験した方も、 きっと心にしまっていた何かを感じることでしょう。 個人的にはハードカバーがおすすめです。 二人が愛を育んだ表紙の写真がより想像を深め、本棚に大切に置かれる日がきっとくるからです。

 その反面、何十年という時を経て会えないままこんなにも想っていられるだでしょうかという問いに突き当たるでしょう。
 人生を共に歩めなかったがずっと心の中にいた沓子、人生を共に歩めたが自分だけではない妻光子、 自分だったら女性としてどちらが幸せだっただろうか・・・きっと一番幸せで、そして一番辛く苦しかったのは豊だったのかもしれません。 もしMich015 、地位や名誉を捨てて、誰かを犠牲に周りを不幸にしてまで、ただ心のままに生きることができたらなら・・・
そうは出来ないと暗黙の了解の中ふたりの揺れる感情を思うとせつなくなります。そこで私は考えました。相手が幸せであれば自分も満足できると私は思います。現に私がそうでしたから。25年好きでもう私には遠い存在のなってしまった彼は今頃奥さんと子供と幸せ
な日々を送っているでしょう。彼が幸せな顔をしているのを想像すると、最初は辛かったですよ。でも彼は私の中でどんどん膨らみ、もう異性としての存在を超越してしまいました。好きな野球も腕を壊してから痛み止めの注射を打ちながら頑張る人でした。時々、新聞で試合結果を見たりしていましたが、今はもう大丈夫です。死ぬ時に、愛した人がいたことは幸せだったときっといえると思います。
 その人とはこの先出会う事が無いのが小説と違う事ですが・・・

 『愛をください』はまた異色の作品です。文通を通して心を開いていく純粋な愛の物語です。施設で育ち自殺しようとした18歳の遠野李理香のもとに1通の手紙が届く。函館に住む長沢基次郎という23歳の男性からだった。同じ境遇の基次郎に心を開き手紙のやり取りをする李理香。その文通には意外な事実が隠されていました。
 小説では決して会わない約束をした二人がやり取りする手紙の文面が綴られています。
最初は愛を嘘と欺瞞に満ちていると思っていた李理香が基次郎との手紙のやり取りで真実を書くことを通じて人を信じることや愛することに目覚めていきます。

 メールの普及で手紙を書く機会が随分減りました。でも相手の筆跡にぬくもりを感じられるのは手紙ならではですね。手紙といういまや消滅しつつある方法でコミュニケーションをするのもいいですね。何度も読み返すことが出来るし、書いた人の家とか地方とかの臭いが手紙に残りますよね。これほんとです。
 「世界の99%は嘘でできていて、 誰もがみんな幸福そうな顔をしては嘘をつきあって、孤独なくせに孤独じゃないふりをして メール仲間を増やしたりしている姿は、 愚かすぎて同情もできないし、 呆れ果ててまねる気にもなりません。」
私たちが孤独を「嘘」や「振り」で隠している姿を 痛烈に批判する、主人公の感情を綴った書き出しの章の一部です。

 主人公の女性は、 そのような感情を抱く自分自身に対しても とても冷淡な視線を投げかけます。
 話の展開としては、 この女性がある人との文通を通じて、人に対して心を開いていく様を描いています。 でも、この本の注目すべき美しい点は、 冒頭の主人公の「人を信じることのできない」感情を綴った箇所にあると思います。 私は、そこからある種の真実を感じ、感銘を受けました。

 『海峡の光』は、舞台は函館のとある刑務所、そこで主人公は受刑者として現れたかつての同級生と出会います。優等生の影で残酷な人間性を持った彼の変化とそれに対する自らの心境が暗く淡々と描かれる世界観を、暗い海に投影しています。
 監視される立場と監視させる立場の2人を隔てる暗い暗い海の中に、一本の光を見出せるか否かの人間関係を深く描いた辻仁成の最高傑作だと思います。文章の運びや言葉では最近の作品の方が洗練されている感もありますが、読者に直に訴えて来る圧倒的な重々しさは他作品とは一味違った独特の深さを漂わせています。辻氏の著書『函館物語』にて、訪問した函館少年刑務所、インタビューした元青函連絡船乗員などをベースにかかれた作品であると思われます。

 物語は、連絡船の元客室乗務員で、現在、函館少年刑務所の看守である主人公が、刑務所に小学生時代に苛められた同級生が入所されたり、青函連絡船が廃止になることで元同僚の乗員達とのわだかまりができたりする中で、揺れる気持ちを描いています。 随所に「函館物語」で、記された「言葉」がでてくる。「函館物語」で聞いた事実を組み合わせて物語に仕立てた辻氏のセンスは、素晴らしいと思いました。

「私は彼のまるで詩でも朗々と読み上げるような口ぶりから、自分が過去に苦Romann002しんだ日々の記憶を思い出してはそっと奥歯を噛み締めた。」と言った一説があります。まるで独房にいる花井が刑務官で、自由が保障されている自分こそが囚人...そんな逆転した関係性
は斎藤を苦しめ続けた"闇"そのものであり、斎藤の人生を捕らえ続 けた暗部が生々しく照射されています。
 暗闇に佇むとどんなに微細な光でも視認することは出来るが、光で包まれた世界にどれだけ光が自己主張をしてもその光がどこにあるのかまではわからない。タイトルの『海峡の光』に込められた意味が最後まで読むと自然と明らかになってきますが、その意味を知った瞬間、私は身震いを止めることができなかった。それほどプロットが練りに練られていて、純文学の真髄が味わえる名作なのでしょう。
 

 純度の高い文章と共に二人の間に底流する体温をぜひみなさんにも感じとっていただきたいです。漆黒の闇がどこまでも終わることなく人生を支配していく条理に無情さを抱きつつ・・・

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コメント

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