« 私の尊敬する大統領~ジョン・F・ケネディ編 | トップページ | 私の好きな俳優たち~イッセー尾形編 »

2009年4月 2日 (木)

私の読まなきゃの作品たち~篠田 節子編

 キャリアウーマンが闊歩することに抵抗を感じている私が読んで笑ってしまったのが篠田さんの作品でした。

 30歳の時、朝日カルチャースクールの小説執筆講座で、直木賞作家多岐川恭の指導を受けました。また32歳で、講談社フェーマススクール・エンタテイメント小説教室で山村正夫から小説の手ほどきを受けます。同じ講座の受講生に、鈴木輝一郎氏、宮部みゆきさんがいたそうです。

 1990年にパニックSFタッチの中篇ホラー小説『絹の変容』で小説すばる新人賞を獲得。その後、異形ホラー小説『アクアリウム』、伝奇サスペンス小説『聖域』、直木賞候補となった医学パニック小説『夏の災厄』、音楽ホラー小説『カノン』、近未来スラップスティック反ユートピア(ディストピア)小説『斎藤家の核弾頭』などを発表。

 官僚制、民主主義、サラリーマン社会、管理社会、家父長制、宗教などさまざまな主題をとりあげており、広義のミステリ、ホラーといったジャンルに分類されますが、篠田さん自身にはジャンル意識があまりみられない点が特徴です。

 編集者からエロティックな作品を、との求めに応じた短編小説Shagaru003 (冒頭作)を連作としてふくらませた『女たちのジハード』では、男性優位社会の中で生き方を模索する若いキャリアウーマン群像を描き、女性のライフスタイルや結婚、妊娠、海外での就職などをコミカルに描写したものでした。この作品で直木賞を受賞。瓢箪から駒が出たような成り行きに、本人は「意外かつ不本意だ」と困惑を披瀝しました。エピソードがあります。この作品はNHKが1997年ドラマ化しNHKBSで放送し、好評を博したため再編集してふたたび1998年地上波で放映されましたね。中心になる3人の女性は、賀来千香子、三井ゆり、千堂あきほが演じました。

 いつのまにか十年以上勤め、30歳を過ぎた地味な康子。思うことを何でもはっきり言い過ぎる、上昇志向で自分磨きに励む紗織。25歳までにいい男を見つけて結婚するため、打算も演技もするリサ。ひたむきで従順だが、甘えることしかできない紀子。損害保険会社の同じ部署に勤める4人のOLが、生きていく道を探して奮闘する物語です。
 「バリバリのキャリアウーマンにもなれず、結婚もしないで、今のままじゃただの売れ残り」だと言われた康子はヤクザと渡り合い、競売のマンションを手に入れる。そこに夫から暴力を振るわれ逃げ出した紀子がやって来る。紗織と康子は紀子の自立の道を探すのですが・・・
紗織は得意な英語を生かそうと翻訳家について勉強するがうまくいかず、留学を決意。異動したリサはセミナーで青年医師と出会うのですが、彼はネパールの無医村へ行くという。そして康子は売れ残ったトマトを抱えた松浦に出会ったことから人生の転機を迎えます。
 時に助け合い時に反発し合う4人は、それぞれ違う考え方をもち、欠点だらけ。そんな彼女たちの中に、自分と重なる部分が見えてきます。結婚、仕事、生き方に迷い、挫折しながらも、彼女たちは夢と幸せを追い求め、「普通の人生」ではない、たった一つの自分の人生を選び取るため戦ってゆくのです。そしてそれぞれが新しいスタート地点に立つところで物語は終わり。
 いくつもある現実の壁に突き当たって戸惑っている人に、主人公たちのジハード(聖戦)はきっと共感と勇気を与えてくれるだろうと少し明るい気持ちになる作品です。篠田節子の観念で塗りたくってない簡潔な文体がいいんですね、きっと。優れた面も愚かな面もひっくるめて女という生き物を愛しく見つめてる眼差しの懐の深さを感じました。

 このような作品で長編にするとストーリーがダラダラになってしまいがちですが、ここは20~30代に直面する人生の葛藤が、五人のキャラクター(その中でも三人がメイン)の個性に沿って描かれるので、そんなこと感じさせません。
 たとえば、結婚願望の強いリサはあの手この手を使って男を落とそうと繰り返しているのに、独立願望の強い沙織は男なんか気にもせず自分のやりたいことを探し続け、お局様で居続ける康子は自分に何か誇りが欲しいと思って自分の城(マンション)を手に入れるために躍起になる、といった感じにです。ここには「女の正しい生き方」というものが説教くさく書かれているわけではなく、「女が女であるが故に悩む生き方」が描かれているのだと感じました。それが長編の中に順序立てて、しかも絡み合いながら進められているのは驚くほかないのです。とにかく読まなくちゃの作品なのです。

 また他にも『ゴサインタン―神の座』、『弥勒』、『転生』、特に、『仮想儀礼』上下巻は圧倒されっぱなしだそうで読んでみたくなりました。もう最近では女流作家はねえなんて言ってはいけませんね。宮部みゆきさん以来時折手を伸ばしかけては躊躇していたこの不平等な行いを正さなければ芥川賞作品は読めません。何故か芥川賞作家さんは女性が多いですよね。それゆえ今後もっと女性の作品も読むことをここに誓います。

|

« 私の尊敬する大統領~ジョン・F・ケネディ編 | トップページ | 私の好きな俳優たち~イッセー尾形編 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/528484/28918805

この記事へのトラックバック一覧です: 私の読まなきゃの作品たち~篠田 節子編:

« 私の尊敬する大統領~ジョン・F・ケネディ編 | トップページ | 私の好きな俳優たち~イッセー尾形編 »