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2009年4月 8日 (水)

興味が惹かれてどうしようもない作品たち~ダン・ブラウン編

 ダン・ブラウン氏といえば一斉を風靡した『ダヴィンチ・コード』が有名ですがマニアはそこで留まることを知りません。『ダヴィンチ・コード』の前には『天使と悪魔』が出版されており、第3作では、タイトルは“The Solomon Key”(『ソロモンの鍵』)。ダン・ブラウン本人のホームページによると、物語の舞台はワシントンD.C.、テーマはフリーメーソンのアメリカ合衆国建国への関わり、というものです。ブラウン氏は「完成には程遠い」と語っていますが、各メディアは2009年に出版されるだろうと予想しています。

『天使と悪魔』も飛ぶように売れて、ダン・ブラウンは「ダ・ヴィンチ・コード」で有名になりましたが、同じラングドンシリーズとして書かれたこの第1作目のほうがおもしろいですね。

かつて科学が宗教を弾圧していた時代があったことなど思いもよらないほど科学が生活に浸透している現代、ヴァチカンを舞台に、科学と宗教の因縁とも言える戦いがミステリアスに始まります。セルン(スイスの研究機関)やイルミナティ、米国からスイスまで1時間で行く飛行機など興味をそそる内容満載。とてもスリルがあって、吸い込まれていくストーリーです。私としてはこちらのほうを映画化すればよかったのにとも思ったのですが、映画化するには怖すぎます。ホラー映画ではないけど、かなりホラーになりそうです。それにしても、この著者の知識量はすごいですね。

 素晴らしい構成とテンポの良い物語の展開で、一気に読ませてくL_rocks れました。それと何よりも知的な好奇心を大いに満足させてくれます。ここまでの長編なのに、最後の最後までいい意味で期待を裏切り続けてくれます。ミステリーという枠に捉われない、素晴らしい作品であると言えます。ある程度、先の読めてしまうミステリーというものも、ある意味では満足感を与えてくれますが、本書はトリックがわかりやすいのに、先を読ませなてくれませんでした。いえ、敢えて読ませて、裏切る・・・そんな展開が、前編を通じて繰り広げられるわけですから、「世界を不眠に陥れた」というロジックも納得できます。
 また、ルネサンス期のキリスト教芸術の圧倒的な教養、キリスト教と科学の両者が生み出すパラドクスがうまく文章の中に融合され、前述したスピード感、小気味のよいリズム感をともなってしまえば、もう敵なしです。
 同じキリスト教を土台にした作品で、完成度はどちらも高いと思うので、あとは好みの問題かとも思います。キリスト教に造詣がないと、少し抵抗があるのかもしれませんが、本書に含まれる、あふれんばかりの薀蓄が、その溝を埋めてくれることも十分に期待できます。 国産のミステリーにも、良さはありますが、ここまでの完成度ともなると、それ程よんだことはありません。キリスト教と科学の対決。天地創造とビックバンの矛盾。みどころ満載の対決を、斬新な視点から描いています。一読の価値ありです。

 『ソロモンの鍵』も秘密めいたことがごそごそ出てきそうですね。今のところいずれ出版される小説の構想は12作分貯まっており、そのうち一つは偉大な作曲家の「事実に基づいた」フリーメーソンとの関係がメインテーマであり、どうやらその作曲家とはモーツァルトではないかと予想されていいます。ん?もう出版されたのでしたっけ?(と急にお惚けポーズ)

 私としてはキーワードとなるのは「フリーメイソン」という秘密結社です。

フリーメイソンとは、会員同士の親睦を目的とした友愛団体でイギリスで発生し世界中に派生した男性の入社的秘密結社(「非公開団体」といっている)の事らしいです。

 フリーメイソンリーは、原則として国や州を単位とする、グランド・ロッジと呼ばれる本部があるものの、全体を統制する総本部はないといいます。ただし、最初にグランド・ロッジの成立した、イングランドのグランド・ロッジによる認証が本流であるとする認識から、これを「正規派」「正統派」と称し、同グランド・ロッジが認証しないロッジは非正規な存在と見なされることが多いそう。以下の「#会員数」「#入会条件」も、正規派とされるフリーメイソンリーの例です。

 グランド・ロッジはプロビンシャル・グランド・ロッジ やディストリクトグランドロッジ ) と呼ばれる県・地域支部、および直轄に管理されるロッジで構成され、県・地域支部はロッジと呼ばれる支部から構成されます。ただし、活動規模の小さい国や地域では、グランドロッジは県・地域支部を置かず、ロッジを直接管理している場合もあり、日本においては厚生労働省認可の財団法人「東京メソニック協会」と任意団体「日本グランド・ロッジ」傘下のロッジ群の2形態で構成され、メソニック協会所有の建物に日本グランド・ロッジが入居し、各ロッジの福祉関連事業は財団の事業予算で支援されているとのこと。また、イングランド系、スコットランド系、フィリピン系、アメリカ・マサチューセッツ州の系統、アメリカ・ワシントン州のプリンス・ホール系(黒人系)ロッジが日本グランド・ロッジとは別系統で存在。それらの殆どは在日米軍基地内にある軍事ロッジ(軍人により設営されるロッジ)です。会員は"Brother"(兄弟)と互いに呼びあい、会員は秘密の符牒で「兄弟」かどうかを見分け、「兄弟」はいざという時は助け合うことになっています。欧米には有力者の会員も多いため、様々な場面で有利に働くことがあるといいいます。ただし、ロッジには外の問題を持ち込まない決まりになっているため、即物的に利益が得られるわけではありません。

 会員数は、同じく日本グランド・ロッジによれば、世界に約300万人。『朝日新聞』に明らかにしたところに拠れば、日本での会員数は約2000人で、多くは在日米軍関係者。日本人は300人程度といわれています。

 但し、入会条件は厳しく、入会資格として何らかの真摯な信仰を要求しており、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教(以上アブラハムの宗教)の信徒はもちろん、仏教徒などであっても入会できますが、無神論者、共産主義者は入会できません。たとえ信仰する宗教があったとしても社会的地位の確立していない宗教(例として新宗教各派)である場合は入会できないのです。ただし、特定の宗教を信仰していなくても、神(あるいはそれに類する創造者)の存在を信じるものであれば、入会資格はあるといいます。これらの信仰を総称して、「至高の存在への尊崇と信仰」と呼びます。そのほかの入会資格としては、成年男子で、世間での評判が良く、高い道徳的品性の持ち主であり、健全な心に恵まれ、定職と一定の定収があって家族を養っていること。身体障害者でないこと。ロッジ会員の投票で全会一致の承認を得た上で、さらに身辺調査を行い最終的に決定します。また、入会時には4万円から6万円程度の一時金が掛かるそうです。そしていざ入会する際には儀式の暗記と宣誓の暗唱が求められます。そのため事前にコーチが付いてレクチャーも行われます(なお、昇級においても儀式の暗記と宣誓の暗唱が求められる)。入会を拒否された場合でも、一定期間を置いて再申請は可能だそうです。

 2006年、『ダ・ヴィンチ・コード』が映画化され、これを観た入会志望者が増加し、無料説明会を開くようになりました。しかし、広報担当の渡辺一弘氏によると、「人脈作りを期待したり、秘密結社という想像を膨らませたりして入って、期待と違うとやめていく人が多い」といいます。これだけでもミステリアスなのに、ブラウン氏は何を書いたのかワクワクしませんか?

 遅くなりましたが、『パズル・パレス』もブラウン氏の作品ですね。専門知識のわかりやすい解説がふんだんに盛り込まれ、短い章立てのスピーディーな展開と、政府機関の魅力的な女性職員スーザン・フレッチャーが主人公に据えられ、大組織NSAの謀略に翻弄されながらの活躍がポイントでした。
 エンセイ・タンカドというおかしな名前の日本人が出てきますが、原爆の影響で身体障害のある天才で、世界最高のコンピューターにウイルスをしのばせることに成功する。セキュリティの壁が次々と破られる、それを止めるのは、タンカドが用意したパス・キーだけ。
スーザンの恋人ディビッド・ベッカーがタンカドの持っているパス・キーを探してスペインへ。タンカドが死ぬ直前に見知らぬ人に指輪を託し、指輪は次々と持ち主を換え、持った人は順に殺され、やっと手に入れたディビッドも命を狙われる。パス・キーは、暗号文の解読をし、解釈が・・・・。登場人物が謎を解こうとモタモタしている間に、読者は答えがわかってしまうというつっこみたい所はあるけれど、どんどん先へと進んで、面白く読めるサスペンスです。

 『デセプション・ポイント』では、大統領選挙戦のさなか、アメリカ航Davi05_2 空宇宙局(NASA)による北極での大発見を機に、NASA擁護派の現職大統領と批判派の対立候補との熾烈な駆け引きが繰り広げられます。よりにもよって対立候補の娘は、大統領の下で機密文書の分析や要約を仕事にしているからややこしい・・・大統領の直々の依頼でレイチェルは北極圏ミルン棚氷で、氷に埋まった巨大な隕石を目に。科学者チームと調査を進めるうちに、レイチェルは信じられない謀略の深みにはまり込んでゆく。
 化石を含んだ隕石の発見・・・地球以外の生命の存在を示唆・・・隕石は本物か・・・隕石が本物でないとしたら誰が仕組んだのか・・・・だれが命を狙ってくるのか・・・。最後には意外な真実が・・・・。大統領選の裏側、権謀術数のあれこれ、NASAの苦悩や活躍、隕石と岩石の違い、化石の知識、専門知識の分かりやすい解説がふんだんに盛り込まれ嬉しい限りです。
 

ダン・ブラウン氏は、事実と虚構の織り交ぜ方が絶妙で、まだ理論的な段階の技術が実用化されたかのごとく使われ、思いつき、または仮説が出ただけのテクノロジーも既成の事実の如く出てきて楽しませてくれるので本当に次回作が待ち遠しいです。

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コメント

とこさん、すごい読書量ですね。
わたし、ダン・ブラウンは「ダ・ヴィンチ・コード」は読みましたが他のは(^_^;)
「天使と悪魔」も興味深いですね。西欧は永い間、芸術も科学も神との戦いであったような気もしますね。
フリーメイソンの記事も興味深かったです。

わたしも高校くらいの時、キリスト教に強くひかれ聖書とかだいぶ読みました。ですが今では創造主なるものは完全に否定、もしいるとしたならこれほど邪悪な者もいないのではと(^_^;)モームの「神の前になぜひざまずかなければならないのだ。人間創造などくだらぬことをした神の前に」という言葉が大好きです(^_^;)むしろ仏教の突き詰めれば虚無主義に引かれます。
わたしのブログを熱心に読んでいただき、コメントをいただく方にクリスチャンの方がいらっしゃいます。信頼できる大人の非常にいい方です。前回の「アマデウス」を書いて反省いたしました(^_^;)わたしが意識していたのは間違いありません。
信仰を考えているというとこさんのコメントでまた反省(^_^;)
ですからあのようなわたしのレスになりました。

わたしの気持ちはもちろんわたしだけのもの。わたしも一方で真摯に信仰に打ち込んでいる人は本当にうらやましいです。とこさんもわたしが言うまでもなく、ご自分の生き方をご自分で選んで進まれることを願ってやみません。

わたしちょっと前までホームページを運営していました。そのときの友人の方のためにも通常のBBSとかも置いています。気楽なおしゃべりでわたしも楽しいです。そちらの方にもよかったらお気楽にお寄りください(*^_^*)

投稿: KOZOU | 2009年4月 9日 (木) 15時50分

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