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2009年5月12日 (火)

私の好きな作品たち~ジョン・ハート編

 ジョンハートは1965年、ノース・カロライナ州生まれ。現在も同州に在住。幼年期を作品の舞台となったローワン郡で過ごしています。
 デイヴィッドソン・カレッジでフランス文学、大学院にて会計学と法学の学位を取得しました。会計、株式仲買、刑事弁護など様々な業種で活躍しましたが、やがて職を辞し、作家を志します。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞にノミネートされた『キングの死』で華々しくデビューし、その後、第二作となる『川は静かに流れ』で同賞の2008年度最優秀長篇賞に輝いた人です。 

 五年前にアダムは殺人の濡れ衣を着せられた。証人は義理の母であるジャニス。裁判では無罪になりましたが、ローワン郡の小さな町では、それでも“人殺し”として認知されてしまいまいた。アダムの父で農場主のジェイコブもまた、アダムの無罪を信じずに、アダムを勘当します。
 そんな故郷に、アダムは、友人のダニーからの電話で、三週間Picasso_work01s 悩んだ末に帰ります。しかし当のダニーは行方不明。そしてアダムにとってはもう一人の父と言うべき、ジェイコブの親友であるドルフの孫娘であるグレイスが暴行に会います。
 事件の背後には原子力発電所に係わる土地買収が絡んでいるように見えるのです。そして容疑者としてダニーの父・ゼブロンが疑われました。更に見つかったダニーの死体。警察はドルフを逮捕し、ドルフも殺害を自供してしまうのです。ドルフの無罪を信じないアダムは真実を突き止めようと頑張ります。
 これは先ず、五年前、回りが疑いの目を向ける中で、変わらずにいたダニーとの友情が描かれてます。この五年間、手紙一つ出さなかたかつての恋人で、刑事のロビンとの愛情の物語でもあります。
 でも何より家族の物語です。五年ぶりに戻った我が家。
継母のジャニィスは、五年前の事件で見た犯人はアダムであると心底信じ込んでいるよう。義弟のジェイミーと、義妹のミリアムは、複雑ながらアダムに親愛の情を示します。しかしジェイミーにはかつての良さはなく、ミリアムは心を病んでいます。
 妹と言うよりも娘のような存在であるグレイスも変わっている。ドルフに対する特別な思いがあるアダム。

そして父親のジェイコブ。頑固ですが正直で一徹。その父と、再び親子になって行こうとする過程は心に染み渡ります。その父親もまた悩みを抱え、間違いもありました。
謝辞で著者ジョン・ハートが述べているように、この小説は、ミステリーの形をとりながら、実は、『僕』自身や『僕』を取り巻く人々の友情や恋愛、そして兄弟や親子の絆を哀しくやるせなく描いた、謎解きは二の次といってもいい、家族をめぐる物語です。

 やるせない思いと家族の絆、信じることの素晴らしさを知った一冊でした。ミステリアスな部分を充分に残し、家族の愛が風のように吹いていった、そんな心境です。

 他にも『キングの死』は、失踪中の辣腕弁護士が射殺死体で発見されました。被害者の息子ワークは、傲慢で暴力的だった父の死に深い悲しみを覚えることは無かったが、ただ一点の不安が。父と不仲だった妹が、まさか…。愛する妹を護るため、ワークは捜査への協力を拒んだ。だがその結果、警察は莫大な遺産の相続人である彼を犯人だと疑います。アリバイを証明できないワークは、次第に追いつめられ… 

 主人公は著者と同じ弁護士で、主人公の一人称で書かれた作品です。主人公の父親が、これまた弁護士で、資産家で大金持ちで、社会的地位は申し分ない男、しかし、家庭内ではどうしようもない暴君、絶対的君主であり、まさに「キング」でです。その主人公の父親が失踪して1年半後、死体で見つかり、父親殺しの容疑者の嫌疑が、その長男である主人公にかかるところからこの物語は始まります。
 主人公の一人称で語られている作品なので、読み手は彼が犯人でないことが手に取るように判ります、そして、自分の妹が犯人ではないかというある確信から、主人公の聖戦が始まるのです。

 友人だと思っていた検事を敵に回し、切れ者女刑事との精神的壮絶バトルを展開し、幼なじみで結婚後も関係を続ける天使のような恋人の心を傷つけ、若き弁護士としては理想的な麗しくセクシーな妻と軋轢を起こし、たった一人残った家族である妹とそのガールフレンドに、父親に似ているということから、徹底的に無視され、そんな四面楚歌のなか、主人公は自分の無実の証明のために闘うのです。
 画像の表紙は階段の上に君臨するのがキング(父親)であり、段下の左腕は、(主人公とその妹の)母親の腕です。この表紙が象徴する
「華麗なる一族」の、物語です。
 

人は何に寄り添って生きるべきなのかを考えさせてくれる感動の大河ロマン&ヒューマン・ミステリです。著者は、作家に転職して多くの読み手を救うことになるのでしょう。

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コメント

おはようございます!やはり晴れていると気持ちがいいですねー(神奈川より)。

「川は静かに流れ」読んでみたくなりました。
五年前の事件とグレイスの事件の絡みが気になりますね。

勘当された父とまた親子の関係を取り戻そうとしていく、いいですねーほんと心に染みそうです(^^)

さっそく今日明日、本屋に見に行ってみます。

投稿: yukidaruma | 2009年5月13日 (水) 09時22分

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