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2009年6月 4日 (木)

私の好きな作品たち~冨川元文編

 久々に脚本家さんのお話です。大学卒業後、墨田区の小学校で図工の先生を8年間勤めました。教職の傍らシナリオの勉強を始め、1977年、『愛してます』(TBS)で師でもある小松吾郎氏との共同執筆でデビューしました。79年には公募に入選した『親切』がNHKで放送され、芸術祭優秀賞を受けました。82年の大河ドラマ『峠の群像』執筆を機に教師を辞職、脚本に専念。その後も『心はいつもラムネ色』『砂の上のロビンソン』『新十津川物語』(NHK)、『パパ・サヴァイバル』(TBS)、『櫂』(衛星第2)など質の高いドラマを茶の間に提供してきました。1991年、『二本の桜』『結婚しない女達のために』で第10回向田邦子賞受賞しています。

 『二本の桜』は、転職を軸にした兄弟愛の物語です。銀行支店長で、将来は重役といわれている剛志が、突然銀行に辞表を出します。腕のいい植木職Shagaru006 人だった兄と造園業をやりたいというのです。昔、ダム建設で沈む村の桜を、兄が移植、見事に根付いた桜を見た時の感動が忘れられないというのですが、転職の本当の理由は…。いうまでもなく桜は日本人の心の原典です。毎年力強く咲き誇り短期間に散るその美しさは人々を魅了し支えとなってきました。ダムに埋没する二本の老いた巨木を人々が惜しみ移転させた荘川桜。   著者はそこにヒントを得、兄弟とは、夫婦とは、木の生命力とは、老いるとは、などをうまく織り交ぜて一編の物語を創作しました。10年以上前に江守徹氏、長門裕之氏主演のNHKでドラマ化された番組ですが市井の人々の機微を上手に描いています。

 最初の作品『親切』では、無理をして3LDKのマンションを購入した若夫婦(岡本富士太、秋野暢子)。ローンの返済に四苦八苦のふたりは、一部屋を貸すことに。やがて老夫婦がその部屋に住み込み、奇妙な共同生活が。マンション問題、老人福祉、安楽死問題などをクローズアップされていきます。

 これらはすごい新人が出てきたと業界を震撼させました。いきなり大河ドラマ『峠の群像』の脚本家に抜擢、普通の小学校の先生が、大河ドラマを書く! というので、当時はあっちこっちの新聞に載ったものです。なんでも、そのとき新聞社のインタビューに、執筆に専念するので、教師も辞め彼女とも疎遠になって・・・とぼやいたらそれが記事になっちゃったと、ぼやいていたそうです。あれから、ざっと四半世紀、さらにカンヌ映画祭パルムドールを受賞した映画『うなぎ』など、名作を次々放ってきました。その間、トルコに留学。これもユニークな経歴。将来、トルコで知り合った、知人達と映画を作ることも、実現させたいそうです。
   
 とにかく富川さんの人間観察、洞察、分析の力は、凄いです。これが、脚本家の力だと思います。
これほど、偉い先生ですが、気さくな方なので、放作協では、女性会員に人気があり、「トミー」の愛称で呼ばれています。最近、ベテランの先生方も、「トミー」と呼び始めるようになりました。

『うなぎ』は、妻の浮気によって人間不信に陥り、唯一飼っているうなぎだけに心を開く中年男と、そんな彼をとりまく人たちの交流を描いた人間喜劇です。監督は前作「黒い雨」から8年ぶりにメガホンを取った今村昌平氏。吉村昭氏の『闇にひらめく』を、冨川さんと「罠」の天願大介氏、そして今村氏自身が共同脚色しています。撮影「BADGUYBEACH」の小松原茂氏。主演は「失楽園」の役所広司さんと、「義務と演技」の清水美砂さん。第50回カンヌ国際映画祭グランプリ(パルム・ドール)受賞作で、今村氏は83年の『楢山節考』に続く2度目の受賞となりました。97年度キネマ旬報ベスト・テン第1位も獲得しています。

 あらすじは、1988年夏、サラリーマンの山下拓郎は妻の浮気を告発する差出人不明の手紙を受け取りました。不倫の現場を目の当たりにした彼は、激しい怒りに駆られて妻を刺殺してしまいます。それから8年、刑務所を仮出所した山下は、千葉県佐倉市の住職・中島の世話で、利根川の河辺に小さな理髪店を開業しました。人間不信に陥っていた彼は、仮釈放中にトラブルを起こしてはならないこともあって近所づきあいもせず、飼っているうなぎを唯一の話し相手に、静かな自戒の日々を送っていました。

ところがある日、うなぎの餌を採りに行った河原で、山下は多量の睡眠薬を飲んで倒れている女性を発見。服部桂子というその女性は、山下によって命を救われますが、山下は「
東京に帰りたくない」と言う彼女を店で使うよう、中島の妻・美佐子Hirosi001 に押し切られてしまいます。でも、明るい彼女のお陰で店は繁盛するようになり、また山下の気持ちも次第に解きほぐされていき・・・。でも、そんな山下の前に刑務所で知り合った男・高崎が現れます。出所し、ゴミ回収の仕事に就いていた高崎は、桂子と幸せそうに働いている山下をやっかみ、桂子に山下の前歴をバラしたり、怪文書を店先に張ったり、山下のSEX経験をバカにしたりと執拗な嫌がらせをしてきます。一方その頃、堂島の子を身ごもっていることが判明した桂子が、山下の前から姿を消しました。過去を清算するために上京した彼女は、母を秋田の病院に帰し、堂島の会社から預金通帳を取り戻すと再び山下の元へ戻ってきます。しかし、堂島はそれを許しませんでした。山下の店へ先回りした彼は、帰ってきた桂子から金を奪い返し、彼女を連れ戻そうとします。ところが、それまで桂子の愛を頑なに拒絶し続けていた山下が、あえてトラブルに巻き込まれると承知しながら、堂島から桂子を守りました。山下は堂島とのトラブルで刑務所に戻されることになりますが、様々な人たちとの交流を通して人間性を取り戻し、桂子とお腹の子を受け入れて、これからの人生を生きていくことを決心するというものです。
 

 それぞれの個性がありながら、織り成す人間模様は考えさせられる事が沢山ありました。人間は弱い、だから助け合い、愛し合う。それを妬む人間の気持ちもよく解りますが、それも弱い人間の性なのでしょうね。少しだけ勇気があれば、少しだけ前進できったら・・・こんな気持ちになるのは、私だけではないでしょう。喜劇風に仕上がっててはいるものの、人間臭さが残るのは、冨川さんの優しさと今村監督の目がこんな素晴らしい作品に仕上がったのだと思います。

 『赤い鯨と白い蛇』も冨川さんの脚本の映画ですが、もうご覧になりましたか?
 雨見保江(香川京子)は、千倉に住む息子夫婦のもとに身を寄せることにってからのお話です。孫の明美(宮地真緒)を伴って千倉に向かう途中で昔住んでいた家を見に行きたいと、館山駅で途中下車しました。保江らがその家の中へ入って行くと、家の持ち主・光子(浅田美代子)が姿を見せ、この家を取り壊して建て直すと話します。保江は千倉に向かおうと促す明美に、「できれば今日はここに泊まりたい」と言い出します。光子はイヤな顔も見せずに承諾してくれました。次第に記憶が心もとなくなった保江は、「昔の約束を確かめるためにここに来た」と明美に打ち明けます。ふと外に目をやると、見知らぬ女性が家を覗いていました。彼女は、美土里(樹木希林)。以前、この家を借りていたことがあるのだと言いいます。女性たちはいつしか古い知り合いのように打ち解けはじめていました。保江が唐突に「この家には150歳になる白い蛇が住んでいて、その蛇と話をすると幸せになれる」と言い出すのです。記憶を辿るように白い蛇を探す保江の脳裏に、少しずついろいろなことが思い出されていきました。その記憶は、保江の心に深く刻まれた、青春時代のある出来事に深く関わりがあるのでした・・・。世代も生きかたもまるで異なる女性たちの出会いと別れを、深い慈しみを込めて描く珠玉の名編です。

 冨川さんの作品をもっと観たい観客の一人でした。

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コメント

投稿: arenabolabet | 2016年7月17日 (日) 15時44分

I truly appreciate this blog. Keep writing.

投稿: penis | 2016年6月 2日 (木) 05時37分

Thank you ever so for you blog article. Keep writing.

投稿: xxx bbw | 2016年3月31日 (木) 05時39分

I really like and appreciate your blog article.Much thanks again. Want more.

投稿: www.calabriatechnology.com | 2015年3月26日 (木) 13時26分

とこさん、おはようございます。こちら曇ってますがまた冷えてます。

富川さん、名前知りませんでした(^_^;)
映画とかも俳優や監督には目がいくのですが脚本家はついわたし、わすれがちになります。考えたらドラマは脚本で決まるですよね。
峠の群像はおもしろく見ましたが脚本を担当されたのですね。
二本の桜もおもしろそうですね。ヒューマニズムにあふれているようですね。
恥ずかしながら「うなぎ」も見ていません。ずいぶん評判になりましたね。とこさんの記事でよくわかりました。今村昌平は好きな監督です。人間模様を撮らせたらぴかいちですね。
「うなぎ」も寂しい人間たちを描いた秀作のようですね。ストーリーもおもしろいと思いました。
特に赤い鯨と白い蛇、興味をひきますね。
役者もそろっているようで特に樹木希林さんがでればまた、独特の味がと思います。白い蛇も絡みきっとシュールな話なのでしょうね。
青春時代のできごと、興味津々です。
いつか見てみたいと思います。

コメントいつも大変ありがとうございます。
以下レスをコピーさせていただきます。

何回でもどうぞです(*^_^*)
目を通していただいてありがとうございます。
あそこにあげているものはかなり前に書いたものです。前にホームページをしていたときから上げていました。今回ブログに書いたものもあれからが多いです。見直すと恥ずかしいのが多く、かなり手直しはしましたが。今後もまずあそこからの作品手直してブログにアップしようと思っています。
長編や特に力を入れた作品はあそこには入れていません(^_^;)
「自転車」とかです。
これからもどうかよろしくお願いします。
ありがとうございます。とこさんもどうかお体気をつけられてです。
今回の邪馬台国、北海道ではあまりなじみないのでしょうね。全国的にもやはり西日本居住者の興味が強いようですね。
にもかかわらず、きちんと読んでいただきコメント大変ありがとうございました。

投稿: KOZOU | 2009年6月 4日 (木) 08時40分

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