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2009年6月 2日 (火)

私の好きな俳優たち~岸恵子編

 岸さんといえば、長くパリんい在住されていて、エッセイなども出されていますが、私はやはり、女優岸恵子さんが好きです。

 最初にいいなと思ったのが『悪魔の手毬歌』のリカ役をした時でした。本当に儚い、霞のような女性だと思います。この映画は、

古い因襲に縛られ、文明社会から隔離された岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村(オニコベムラ)。青池歌名雄は、葡萄酒工場に勤める青年。歌名雄には、由良泰子という恋人がおり、仁礼文子もまた、歌名雄が好きであった。この由良家と仁礼家は、昔から村を二分する二大勢力でした。しかし、二十年前に、恩田という詐欺師にだまされ、それ以来由良家の、勢いはとまってしまい、逆に仁礼家が前にもまKeiko002 して強くなった。その時、亀の湯の源治郎、つまり歌名雄の父親が判別のつかない死体でみつかりました。この事件を今も自分の執念で追いかけているのが磯川警部。磯川は、ナゾをとくために、金田一耕助に調査を依頼。金田一は、最初に恩田と特にかかわりがあった多々良放庵に会う。その頃、村では大騒ぎ。というのも、別所千恵が、今では人気歌手大空ゆかりとなり、今日はその千恵の里帰りの日でした。その晩、千恵の歓迎会の時に、第一の殺人事件が起きた。泰子が何者かによって殺されたのだった。そして、泰子の通夜の晩、葡萄工場の発酵タンクの中に吊り下げられて死んでいる文子を発見。この二つの殺人事件には、この地方につたわる、手毬唄の通りに行なわれていることを金田一は発見。そして、文子の通夜の晩、犯人は、千恵に入れかわっている里子を殺してしまいます。この犯人は、青池リカで、里子は、母親が犯人であることを知り、千恵の身がわりになったのである。金田一の捜査により、恩田と源次郎は同一人物である事が解ってしまいます。そして、恩田=源次郎は、千恵、泰子、文子の実の父親なのでした。リカは、それらの娘たちと血のつながる歌名雄をいっしょにできないと思い娘たちを殺してしまったのです。リカは、犯行を自供後、沼に入って自殺を測るという、ご存知の方が多い作品ですが、他の横溝作品より、好きな作品でした。
 このリカと言う役は歴代、何人もの女優さんが演じてこられたのですが、私は岸さんがはまり役だと思っています。彼女の持っている吸引力は、なんなのでしょうか・・・と考えた時、それはきっと彼女らが、「安定しきっていない存在のあり方」を楽しんでいるからなんだと思いました。小賢しい「演技の技術」を身につけた凡庸な役者たちが繰り出す優等生的な演技ほど、見ていて退屈で眠くなるものはありません。器用な台詞回しと器用な表情を作り、「映像演技のお手本」のようなマニュアルどおりの立ち回りを見せられても、スリルがないんです。よく、「子どもと動物には敵わない」という喩えがありますが、それは本当だと思います。子どもと動物は「次に何をするのか」予測がつかないから見ていて面白いし目が離せない。児童劇団で大人に飼いならされて死んだ目をしている子役たちを別にして、子どもというのは基本的に「打算」とか「計算」を身に付ける必要がない存在ですから、自分の内面に忠実に、天真爛漫に振る舞うことが出来ますよね。岸恵子さんの「演技者としての存在のあり方」も、まるで子どものような無防備さとスリルを感じさせてくれるものでした。演技技術というマニュアルに則った「安定」に寄りかからず、不器用さも醜さも含めた内面の多様性を隠さずに表現し、他者に開いてぶつかっている潔さ。ベテラン女優であるはずなのに、他の誰よりも演技が「素人っぽい」んです。だから目が離せない・・・「次の行動」や「次の表情」が読めないし、どんどん裏切ってくれるから退屈せずに見ていることができるし、常に驚かされ続けるんです。それがいろんな映画やドラマに出ていてつい見入ってしまうのです。

 『女王蜂』の家庭教師、神尾秀子役も最後まで目が離せませんでした。他にも『女が結婚しない理由』(1992) 『天河伝説殺人事件』(1991) 『式部物語』(1990) 『細雪』(1983) 『古都』(1980) 『闇の狩人』(1979) などは必見でしょう。

『細雪』は、昭和十三年の春、京都嵯峨の料亭、蒔岡家の四姉妹と幸子の夫貞之助が花見に来ているところから始まり、幸子は今度の雪子の縁談を本家の長姉鶴子(岸さん)から、家系に問題があるとの理由で断わるように言われ苛立っていました。五年前末娘の妙子が、船場の貴金属商奥畑の息子啓ぼんと駆け落し、その事件が新聞ダネになり、しかも雪子と間違って書かれ、本家の辰雄が奔走して取消し記事を出させたら、妙子の名をより大きく出す結果になったことがあったのです。妙子も雪子も本家の不手際から分家の幸子の家に居つくようになってしまいました。人形作りに励む妙子は、啓ぼんとの仲も冷め、奥畑家にもと奉公していて、現在は写真家で立とうとしている板倉と親密な間柄になっていましたが、板倉は中耳炎をこじらせて急逝してしまいます。雪子は、鶴子が夫の筋から持ってきた銀行員、幸子の女学校時代の友人、陣場夫人Monet07 の紹介の水産技官野村、幸子の行きつけの美容院のマダム井谷が持ってきた製薬会社の副社長橋寺とお見合いしますが、いずれも雪子が気にいらなかったりとうまくいきませんでした。そんな折、本家では辰雄が会社からもって帰ってきた東京赴任の知らせに、鶴子が動転していました。井谷がまた雪子に見合い話を持ってきます。相手は華族の東谷子爵の孫。板倉が死んでから酒場通いを続けていた妙子は、その酒場のバーテンダー・三好のところに押しかけ同棲してしまいますが、貞之助が会いに行くと、三好はしっかりした青年で、妙子も地道な生活設計を立てているようで心配はありませんでした。鶴子は悩んだ末東京へ行くこを決心し、雪子も東谷との縁談がまとまります。そして、冬の大阪駅、雪子や貞之助らが送るなか、鶴子たちを乗せた汽車は出発しました・・・谷崎作品の傑作を見事に映画化しています。会話が大阪弁で書かれた異色の作品でもあります。

市川監督は岸さんがお気に入りだったのでしょうか、映像の美しさと岸さんがまるで遷ろうもののように映し出されていますね。

 パリに在住し、色んな苦難もあったと思いますが、そういう外国暮らししてますよとか、苦労しましたよと言うことは微塵も出さず、いつもにこやかにしていらっしゃる姿勢は見習いたいものです。

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コメント

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投稿: angelica sin | 2016年7月 9日 (土) 09時22分

こんにちわ。
今日は曇っていましたが暑くなかったです。

横溝作品だいぶ映画で見ましたがこれは見ていないようです。いや、こんがらがっているのかな(^_^;)
岸さんが横溝作品に出ていたシーンはよく覚えていますのでこれだったかな(^_^;)
あ、もしかしたら天河殺人事件だったかな(^_^;)
ほんとに彼女、天性と言ってもいいような優雅さを感じますね。育ちもいいのでしょうね。書かれてありますように、子供にも似たような天真爛漫、小賢しいところを感じないですね。
細雪、読みましたけれど映画は見ていないですね。
豪華女優人のポスターはよく覚えています。
岸さん今ちょっと調べたら76歳くらいになられるのですね。
信じられないくらいです(^_^;)

投稿: KOZOU | 2009年6月 2日 (火) 17時43分

 おひさしぶりです★悪魔の蹴鞠歌はちょうど一年前くらいにテレビでやっていて、見ましたよー(^^)蹴鞠歌がなんとも怖かったですね。いやぁあれは、怖いですよ。

 そうですねリカさんの演技は見ていて予測がつかない部分が多かったように思われます。物金田一との対話など、物語の終盤では一挙一動に引き込まれるようでした。
横溝作品の中では僕もあれが好きですね。濃いなぁと思います。

投稿: yukidaruma | 2009年6月 2日 (火) 09時35分

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