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2009年6月 3日 (水)

私の好きな映画~『サバイビング ピカソ』

 私は大抵の画家は好きでしたが、高校に入るまで、ピカソだけは受け入れられないでいました。それは、支離滅裂な絵、何故こんなに絶賛されるのか、批評家がいいと言ったことで誰もがいいと言い出したのではないかという疑問があったからでした。正直、ピカソの有名な絵画は、私には理解できず、そのことを率直に高校の美術の先生にレポートとして提出しました。そして、その答えは『いい作品には多くの人が自然に集まってくるものです。そこで初めていい作品と言われるようになるのですよ。』と言われ、ふと我に返りました。それ以来、ピカソの作品を青の時代のものから現在に至るまでPikaso001 観直しました。そして深く調べるようになったのです。

 私の過ちだと気付き、どれだけの作品を食い入るように観てきたことか・・・言うまでもありません。今年の誕生日に、私はピカソの画集をプレゼントされました。とても大切な宝物がまた一つが増えました。その間、1996年に『サバイビング ピカソ』が発表され、何度も足を映画館に運びました。

 老境に入った天才画家パヴロ・ピカソと、彼をめぐる女たちの姿を描いた伝記ロマンです。監督はジェームズ・アイヴォリーで、製作のパートナー、イスマイル・マーチャントとは、30年以上に渡る名コンビで知られていますね。製作はアイヴォリーとマーチャントにデイヴ
ィッド・L・ウォルパーの共同。脚本のルース・プローワー・ジャブヴァーラ、撮影のトニー=ピアス・ロバーツ、音楽のリチャード・ロビンス、美術のルシアナ・エリッヒは「ハワーズ・エンド」でも組んだ常連スタッフです。主演は「ニクソン」のアンソニー・ホプキンス。
 ヒロインにはオーディションで選ばれた舞台出身のナターシャ・マケルホーンが抜擢され、本作がデビュー作となった。共演は「42丁目のワーニャ」のジュリアン・ムーア、「ロシア52人虐殺犯/チカチーロ」のジョス・アックランド、「ヒート」のダイアン・ヴェノーラ、「ジェイン・エア」のジョーン・プロウライトほかです。

 あらすじは、1943年。大戦下のパリ。22歳の画学生フランソワーズ・ジロー(ナターシャ・マケルホーン)は、61歳の天才画家パヴロ・ピカソ(アンソニー・ホプキンス)と運命の出会いを果たします。38歳の年齢差を越えてピカソを愛するようになるフランソワーズ。ピカソには長く別居中の妻オルガ(ジェーン・ラポテア)、2人の愛人マリー=テレーズ・ワルテルと芸術家であるドラ・マール(ジュリアン・ムーア)Pikaso004がいました。かつてドラと暮らした南仏の家にフランソワーズを連 れて行き、母性的なマリー=テレーズから毎日送られて来るラヴレターを彼女に読んで聞かせるピカソ。彼の女に対する倣慢さを知り、恥辱を感じて家を去ります「が、ピカソは彼女を連れ戻し、永遠の愛を誓わせました。愛の苦しみは感じつつも、芸術家としては啓発されるピカソとの生活。1947年に長男クロードが、49年に長女パロマが生まれてからは、南仏の陶器工房が生活拠点になっていました。ピカソの知己のアンリ・マチス(ジョス・アックランド)との交際も始まりましたが、ピカソはお守り役的な新しい愛人ジャクリーヌ・ロック(ダイアン・ヴェノーラ)の元へ通い始め、2人の仲は急速に冷えていきます。祖母(ジョーン・プロウライト)が亡くなり、葬儀のためパリへ赴いた彼女は、浮かれ騒ぐピカソを見て、彼との別居を決心。子供たちだけとパリで暮らすという訣別宣言に幼児のように泣きわめくピカソ。数カ月後。ジャクリーヌと暮らし始めたピカソを訪ねたフランソワーズ。「君は戦士のように私の人生から去って欲しい」と彼女に願うピカソ。ピカソを称えた闘牛の開会式。フランソワーズは白馬にまたがって姿を現し、身をもって彼への失いがたい尊敬と自身への誇りを示すのでした。

 サバイビング…といっても、巨匠ピカソの長寿の秘けつの物語じゃなくて、彼の40歳年下の愛人フランソワーズが、いかにしてこの恋多き天才芸術家との10年の愛の生活をサバイビングしたか(生き残ったか)を描いた、天才ピカソを恋愛遍歴から描いた伝記映画です。現実にはもっと生々しくドロドロとした愛憎劇が繰り広げられたのかもしれないですが、監督のセンスかナターシャ演じるヒロインの魅力ゆえか、ラストの闘牛場のシーンに象徴される”愛の闘争”を描いた作品とはいっても、鑑賞後は、妙にすがすがしく颯爽とした気分になってしまうラブ・ストーリーでした。
 この映画は、ピカソ、フランソワーズ、その他の女性たち、誰かひとりに思い入れて同情的に描かれてるワケではなく、非常に公平な視点で描かれていたからだと思います。「恋は戦争といっしょ・・・ルールも掟もない(by カルメン?たしか)」、そして「恋愛には被害者も加害者もない」・・・あらためてそう強く感じました。

 ピカソは、いわゆる女たらしとは当然違います。ピカソ本人のPikaso005 みならず、彼に振り回され、別れていく女たちは、その苦しみ(だけではないけれど)のなかでしか生きていけない類の人種なのだと思います。対人関係の距離のとり方が互いにどこか似ているようにも見えました。
 だから、そこに善し悪しという価値は、意味を持ち得ないと思うのです。アンソニー・ホプキンスはピカソの生き写しのようにも見え、つい私もピカソに関われたらと願ってしまいました。マチス、ブラックなどの芸術家との交流、彼を支えた女性達とのエピソードなどがとても分かりやすく表現されていましたが、これを観て興味がわいたのはピカソ自身より、むしろ彼を愛した女性達でした。今回特にクローズアップされていたのはフランソワーズ・ジロー。なんでも、ピカソを「捨てた」女性は彼女ただ1人だったそうです。なので個人的にはあのラストに小さなカタルシスを感じました。金銭的にも、女としてもピカソに頼らず自立した女性だったフランソワーズ。素敵すぎます。

 一人の女性として、芸術家を愛するということは、とてつもなくパワーがいるような気がします。太宰氏のように心中することのほうが楽に思えてしまいます。そんなこと、思ってはいけないのですが・・・

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コメント

こんばんわ。
こちらよく降り梅雨に入ったような感じです。

この映画のことは知りませんでした。とこさん、何度も見られたのですね。
いつも幅広い関心に感服します。
ピカソの絵、高校の時美術館でゲルニカを見ました。わたしも評判の割にはいまいちわからなかったです。
そのあと青の時代の絵を見てとても好きになりました。
派手な女性関係も聞いていましたがとこさんの記事で正しく知ることができました。
やっぱすごいですね(^_^;)
芸術家としての強烈なオーラを発散したのでしょうね。芸術好きの女性が惹かれるのもわかる気がします。絵がなければただの助平おやじでしょうが、女性がついていくはずもないですね。
それにしてもフランソワーズという女性かっこいいですね。映画では白馬にまたがり闘牛場に、それはすごいですね。
かっこよすぎます(*^_^*)
彼女に視点を置いた映画なのですね。

ピカソすごく人間的な人間だったのでしょうね。
後半生はフランス共産党に入党し生涯党員だったようですね。ゲルニカを書いた心情と言いそのようなところは好きですね。
確かに彼に接する女性は大変だったと思いますけれど。たしか愛人の幾人かは自殺もしていますね。芸術家の強烈なエゴ、並みの人間ではたしかに対抗できないのでしょうね。
おもしろそうな映画だと思いました。

投稿: KOZOU | 2009年6月 3日 (水) 19時49分

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