« 私の好きな作品たち~大森寿美男編 | トップページ | 私の好きな作品~『第三の時効』 »

2009年7月 6日 (月)

 私の好きな作品~『クライマーズ・ハイ』

 ご存知横山秀夫氏の作品です。実は映画化されていたことを知らなかったので最近本で読みました。

1985年、群馬県御巣鷹山で起きた日航機墜落事故をめぐって翻弄される地元の新聞記者たちの姿を描く社会派ドラマ。実際に記者として日航機墜落の取材をした作家・横山秀夫s氏」が自らの体験を反映した同名小説を、映画『金融腐蝕列島 [呪縛]』の原田眞人監督が映像化しました。地元新聞社の熱血漢デスクを『ALWAYS 三丁目の夕日』の堤真一が演じたほか、『殯(もがり)の森』の尾野真千子ら実力派が集結。感情が激しく交わる濃密な1週間の人間ドラマに圧倒されれます。

 あの夏の惨劇――直後に動き出す地元新聞記者たちの闘Higashiyama_work15s い。編集局内の確執や販売局との対立といった事態に直面し、ブンヤ魂が熱くほとばしる。カオスの中、脇役たちが活写され、局内の管理職・蛍雪次朗、遠藤憲一、でんでんら個性派キャラは、ここぞとばかり全開でした。単なる事件記者ものではないのです。あれから23年経った現在から、極限状態の中を無我夢中で生きた全権デスク・堤真一が、トラウマともなった過去を思い起こし、今また新たな「山」に登り直すという構成を採っています。つまり、1985年の墜落事故は彼の心象風景でもあるのです。

原田眞人氏の演出は、サスペンスフルではあっても、相変わらず内面の掘り下げにもどかしさを感じさせ、時折インサートされる現代のパートは、過去とうまく反照し合わないらしいです。立て籠もった若者たちの描写を一切捨象した権力礼賛映画「突入せよ!『あさま山荘』事件」の原田は、何を血迷ったのか、今度はもっと遺族側を描こうと画策したようです。だが、原作者・横山さんから受けた「君は『クライマーズ・ハイ』がやりたいのか? 日航機墜落事故がやりたいのか?」という示唆が効いたようで、未曾有の悲劇そのものを描くだけの映画では終わらず、あの事故を通過した主人公の、組織という父性からの自立、息子との関係を修復し自身が父性を確立するというテーマは貫かれました。極度の興奮によって感覚が麻痺した状態を脱し、挫折を乗り越えて成長するという
物語の核心はかろうじて担保され、映画的醍醐味が味わえる佳作に仕上がっているそうです。

 1985年8月12日、乗員乗客524名を乗せた日航機123便が、群馬と長野の県境に墜落、その一報が北関東新聞社に入る。編集部で全権デスクに任命された悠木和雅は記者として扱う一大ニュースに対する興奮を禁じえないが、中央紙とのスクープ合戦や組織や家族との衝突を経て、命の重さに対しわき上がる使命感を覚えます。
 
 新聞社デスクの、ひりひりするような、日々の葛藤を、臨場感たっぷりに描いていますね。思わず感情移入させられ、その場で、ビジネスの、大小のさまざまな摩擦の中にいる感覚を味わえます。これらの瑣末なしかし影響度合いの大きな日常の葛藤と、大惨事、人の生死という、エポック・メイキングな出来事とを、錯綜させて、主人公の苦悩のほどを、描いています。

 新聞社でのキャリアを、寒村の記者とし終えた主人公ですが、なんと手ごたえある、人間らしい人生だったでしょう。これもまた、猪瀬直樹の「日本凡人伝」を彷彿とさせる、凡
人でありながら、筋を通した人物の、ドラマでだと思います。 責任を負った者がそれを果たそうとするも、壁に阻まれ思い通りにならない歯痒さに共感する方が多いと思います。阻む「壁」は、時には自分自身の揺らぎであったり、組織であったり、人であったりと様々。

日航機事故を巡る新聞社を描写しながら、現実に対応していく人々の生き様が描かれ、人の弱さと強さが浮き彫りにされます。
生きていれば思い通りにならないことは沢山あって、主張や妥協を経て、着地点を見つけるのも一苦労だなと思ってしまいますね。安西の「下りるために登るんさ」というのも、彼が目指した着地点でえした。読み終えて、自分にとって、何か見出したい着地点はあるのだろうかと自問が残ります。また、何かに対して「クライマーズ・ハイ」な状況になったことがあるかと鑑みるに、無い。何だかそれも哀しい・・・。

 横山さんの作品は今1冊も目を話せないところですね。

|

« 私の好きな作品たち~大森寿美男編 | トップページ | 私の好きな作品~『第三の時効』 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
少し訂正させてください。
「なめらかな軟着陸、これもまず飛んでみることが先でしょうからね」、これは私のことですので。
もちろん無理に飛ぶことはないです。
ただ浮遊していても着地は必要ですよね。
いつかスムーズに着地されることを切望しています。

投稿: KOZOU | 2009年7月 7日 (火) 04時48分

おはようございます。
こちら雨は上がって暑くなりそうです。

横山さん、半落ちとかいくつか読みましたがこれは映画を見ただけで読んでなかったですね。
とこさんが的確に書かれているように新聞社の熱い現場をよく表していると思いましたが原作はもっと緻密なのでしょうね。
あの事故からもう24年も経つのですね。月日はほんとに早いと驚きます。
「突入せよ!『あさま山荘』事件」は大嫌いな映画ですね。(^_^;)
クライマーズハイ確かにありますね。夢中になり恐怖心を忘れる、ですから山の事故でなくなった人は想像するほど恐怖はなかったと思います。いいことかわるいことか知りませんが。
人生の着地点、確かに難しいですね。
なめらかな軟着陸、これもまず飛んでみることが先でしょうからね。

投稿: KOZOU | 2009年7月 6日 (月) 06時42分

おはようございます。
いつも
ありがとうございます。
深い造詣にいつも感心
させていただいています。
お互い
無理せず
今生きていることが
最大の幸せであるとする生き方
を実践できたらと思っております。
大変難しいですが、だから挑戦
とおもっています。
もし、機会がありましたら老子の
その辺のところ、とこさんの視点で
切り出してほしいな~と思いました。
勝手なことをいってすいません。

投稿: 茶々 | 2009年7月 6日 (月) 05時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/528484/30425217

この記事へのトラックバック一覧です:  私の好きな作品~『クライマーズ・ハイ』:

« 私の好きな作品たち~大森寿美男編 | トップページ | 私の好きな作品~『第三の時効』 »