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2009年7月20日 (月)

私のすきな作品たち~朝倉かすみ編

 このところ、女性の小説も積極的によむようになりました。というのも私の年齢層と近い主人公がでてくるのが気にってたまらない、そして今の若者の考え方ももっと理解したいと、同じ女としてかんじているからです。

 朝倉さんは、北海道小樽市出身、札幌市在住しています。それだけでちょっと親近感。2003年『コマドリさんのこと』で北海道新聞文学賞受賞。2004年『肝、焼ける』で小説現代新人賞受賞。2009年『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞受賞も持ち主です。

 私が一番きになるのは『ロコモーション』です。この結末は、幸Kaii002 せ? 不幸せ? 吉川英治文学新人賞『田村はまだか』では止まらない。「週刊現代」「週刊新潮」「産経新聞」その他メディアで「強烈な読後感」と絶賛の一冊です。朝倉かすみの衝撃的才能。最新書下ろし長編。

 彼女の名はアカリ。この街でいちばんさびしい女のひと。いちばん気になる女のひと。

 小さな街で、男の目を引くカラダを持て余しつつ大人になった地味な性格のアカリ。
色目を使われたり「むんむんちゃん」などのあだ名を付けられたりしない静かな生活を送りたくて、大きな街に引っ越し、美容関係の仕事を見つけました。でも新しくできた屈託のない親友、奇妙な客、奇妙な彼氏との交流が、彼女の心の殻を壊していく・・・。
読む者の心をからめ取る、あやうくて繊細でどこか気になる女のひとの物語です。 自分でも気付かないほど微妙だけど、ずっと澱となってたまっていく心の動きが、朝倉さん特有の適度に乾いた文体とリズムで描かれています。 これがピンポイントに私の心を突いてきました。

 例えば、幼児の頃家に訪れた外国人宣教師の真似をして意味もなく罪悪感を感じる場面、こんなあだ名で呼ばれたら嬉しいと、心の中で微笑む場面。……まだたくさんそういう場面があるので、二つぐらい例を挙げても赦されるでしょう。
小説と同じ場面を経験したわけではないですが、主人公のこの心の動きは、あの時の私だ、知っているこの感じ!と、私は思わず本から顔を上げて、しばし呆然としてしまいました。 少なくとも、私はそうでした。

 主人公の微妙な心の揺れが少しずつ積み重なっていき、それに呼応しながらストーリーは変化していきます。その塩梅が絶妙。優れたサスペンス、心理劇を見ているようです。 そして後半、主人公は全く予想もしない方向に進んでゆくのです。驚きますよ。

 他人の人生と心の内をのぞき見たような緊張感と興奮がありました。
でも、作品自体くどくどしていないし、重苦しくもない。なんなのでしょう、この洒落っ気と哀しさの同居の妙は。

『田村はまだか』とはテイストが違いますが、個人的にはこっち『ロコモーション』が好きです。粘土を握りしめて握りしめて、さらに握りしめた上で、にゅるっと「それでも生きていきまっしょい」という肯定的なテーマが見えてきます。そんな感じがたまりません。

『田村はまだか』は確かに面白いです。2009年吉川英治文学新人 賞受賞作。かつて「孤高の小学六年生」と言われた男を待つ、軽妙で感動の物語です。

 深夜のバー。小学校のクラス会の三次会。四十歳になる男女五人が友をHaruoinoue002待つ。大雪で列車が遅れ、クラス会同窓会に参加できなかった「田村」を待つ。 「田村」は小学校での「有名人」だった。有名人といっても人気者という意味ではない。その年にしてすでに「孤高」の存在でした。貧乏な家庭に育ち、小学生にして、すでに大人のような風格があったのです。

 そんな「田村」を待つ各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。今の自分がこのような人間になったのは、誰の影響なのだろう----。四十歳になった彼らは、自問自答します。最初は5人それぞれがバトンを受け渡しながら「田村くん」との思いでを中心に物語を進めて行くのかと思いきや、それは第一エピソード「田村はまだか」のみ。

 後はバーでクダを巻きながら各人が語るそれぞれの人生のエピソードで「田村くん」とは直接には関係がありません。 ただ、そんな彼らを外から眺めるバーのマスター(こちらも何かと「訳あり」)の存在感と誰からともなく発せられる「田村はまだか」というコールが物語の輪郭に効果的なアクセントを加えています。

何となく「イイ話OR泣ける話」っぽい売り方をされている雰囲気もありますが実際はそれほど甘い話ではなく、その部分を期待外れと感じる方も多いのではないえしょうか。
 人生の折り返し地点辺りに差し掛かった男女5人、きれい事だけで済ませられるはずもなく、語られるエピソードは赤裸々であったり身も蓋もなかったりします。 ただし、決して嫌味な話ではなく、説教臭さもほとんどありません。
 それでいて描かれるエピソードはどこか「ぬるり」としたリアルさがあって読ませます。
個々のエピソードは好き嫌いが分かれるところですが筆力は確かな物を感じさせますし脇のキャラの造形も上手い(特にバーのマスターと会社勤めをしながら「隠居している」二瓶さん)。

「田村さん」の到着をめぐるラストエピソードの展開には意見が分かれそうですが落とし所としては後味の良さを含めて面白い構成になっていますね。

人生の約半分が過ぎて感じる自分の将来ポジションについてのあきらめ、子供時代についての懐旧等自分自身同世代ゆえに登場人物の思いに共感するとともに、そのリアルさに心を抉られるような感じです。

ラストはちょっと甘い感じですが、同世代への応援歌として受け止めたいです。

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コメント

おはようございます。
こちらまた雨です。

またまたこの方、全然知らなかったですね(^_^;)
記事を読んで興味深かったです。
ロコモーション、とこさんが引かれるのもわかるような気がしました。
素朴な女性の心理の揺れ、とまどい、などが的確に表現されているのですね。そして最後は彼女なりに”飛ぶ”ようですね。どのように飛んだのか興味あります(^_^;)
「粘土を握りしめて握りしめて、さらに握りしめた上で、にゅるっと「それでも生きていきまっしょい」という肯定的なテーマ」、的確でおもしろい表現ですね(*^_^*)
田村はまだか、もおもしろそうですね。
ゴドーを待ちながら、ではありませんが。
「人生の約半分が過ぎて感じる自分の将来ポジションについてのあきらめ、子供時代についての懐旧等」、このようなテーマは好きですね。
これから活躍されるのでしょうね。

とこさん、いつもコメントありがとうございます。
今回は特にたくさんありがとうございました。
レスを書いていますのでいつかご覧になってください。

投稿: KOZOU | 2009年7月20日 (月) 06時16分

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