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2009年8月12日 (水)

私の好きな俳優たち~笠 智衆編

 忘れ難い俳優さんの中の一人、笠さん。誰もが温厚なおじいさん役として心に残っている事でしょう。

小津安二郎監督の『一人息子』(1936年公開)でまだ32歳だったのに初めて老け役を演じ、好演。この老け役の成功が、笠の俳優としての地位を築くものとなりました。そして『父ありき』(1942年公開)では小津作品で初の主役を演じました。『Ryuutishuu_003 若人の夢』に出演後はほとんどの小津作品に出演していた笠さんですが、極度に感情を抑え、淡々とした語り口という日本人の「父親」としての役どころは、この作品が原点です。以後、小津さんの遺作となる『秋刀魚の味』まで主役・脇役を問わず、すべての作品で重要な役を演じています。

 小津氏亡き後は山田洋次監督作品の『男はつらいよ』シリーズに出演し、御前様として知られるようになります。第40作からは出演シーンも少なくなったものの、亡くなる直前まで出演した『男はつらいよ 寅次郎の青春』が遺作になりました。出演としては第45作が最後ではりますが、第46・47作では劇中で御前様が生きているとの言及があります。

  またテレビドラマにも出演し、山田太一氏が「笠さんに主役を演じてもらいたい」(NHK笠智衆の追悼番組より)として書き下ろした『ながらえば』、『冬構え』、『今朝の秋』に主演、高い評価を受けました。なお、『今朝の秋』放映時笠さんは83歳で、現時点でテレビドラマで主役を演じた最高齢の男優でもあるのです。

 『今朝の秋』は、今は亡き 笠智衆。杉村春子。体の元気な樹木希林。若くて美しい倍賞美津子・・・と豪華な俳優陣。

脚本(山田太一さん)が良くていい演出(深町幸男氏)がそこここに光っていてすべてに無駄がない、球形のような作品でした。
 

 木漏れ日の美しい自然のなかで 老いた(70代 80代)の両親に支えられて終わりの日を迎えようとしている50代の息子。 両親は20数年前に離婚しており ・・・・ 息子には 2人の子がいますが、 妻から 離婚を請求されている・・・。 
 それでも、今は3世代の毀れた家族が、ガンの息子を中心として肩を寄せ合い「生」をみつめていきます。
満ち足りた夜。家族で歌う「恋の季節」・・・・・ それは母親が20年前 家を出てから 父親がよくうたった歌だった。

錯覚しそうだなァ・・・・・。 家族ていいなァ。

(返)錯覚ていうことはないでしょう・・・・。 あんたのためにこうやって集まっているんだもの。

歌が遠のき・・・・・ 家族の映像が遠のき・・・・・ モノクロになり 暗転。

次のシーンには、 鳥の鳴き声と木漏れ日、 緑をわたる風が映し出され、カメラは部屋に置かれた祭壇へ。そこには息子の位牌が・・・
 

 例によって深町演出の見事さです。なにも説明はいりません。カメラがなめるだけで視聴者はの間に流れた厳かな温かい時間を感じることができます。

 この会話で 元夫婦が二人きりで 数日息子の位牌といたことが分かります。

作品をとおしての笠智衆さんの顔がいいんですよね。病む息子の横に座った笠智衆の視線。元妻を見つめる笠智衆の視線。人間の内面が育っていないと、 こういう顔は出来ないと思う顔。
 人はもしかしたらこういう顔ができるようになるために年をとるのかも知れませんね。役者笠さんに拍手です。  

NHKでは笠さんの亡くなった直後に追悼番組として『今朝の秋』 を放映しまDaisougenn_005したが、放映後笠を悼む感想が多数寄せられたそうです。その中でも多かったものが、笠さんを自分の祖父のように思い、笠の死が自分の祖父が亡くなったように思えて悲しい、という内容でした。NHKではこれらの感想を中心に構成された番組を放映。笠さんとの共演が多かった杉村春子がナレーションを担当しました。杉村さん自身も手紙の多さに驚き、笠さんの人気の高さに感動したと述べています。

 もう1つ、『あ・うん』のおじいさん役も印象的でしたね。一癖も二癖のありそうなおじいさん、でも『ありゃ、駒犬さんだな。』という一言が全てをを語ったドラマでした。

 とにかく素晴らしい俳優さんでした。

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コメント

qkRuBIlx, anime.ex-navi.biz, エロ萌えっ!抜けるエロアニメ, http://anime.ex-navi.biz/moe/16.html

投稿: エロ萌えっ!抜けるエロアニメ | 2011年10月26日 (水) 00時46分

おはようございます。
ちょっと雨が降りました。

笠智衆さん、わたしもとても好きでした。この上ない温厚な顔、ゆったりとした語り口、ほんとに理想の「爺」さまでしたね。書かれていますように人はこんな顔ができるようになるため老いるのかもですね。だとしたら老いるもまたよしですね。
けして力まず、あるがままを肯定し、わたしもこんな顔になりたいものです。とても無理でしょうが(^_^;)
「今朝の秋」見ていないのですが見たかったですね。
「歌が遠のき・・・・・ 家族の映像が遠のき・・・・・ モノクロになり 暗転。次のシーンには、 鳥の鳴き声と木漏れ日、 緑をわたる風が映し出され、カメラは部屋に置かれた祭壇へ。そこには息子の位牌が・・・」
とこさんの巧みな記述でほんとにシーンが目に浮かびます。確かにとてもいいラストですね。
「あ・うん」もとても印象に残るドラマでしたね。

とこさん、いつもコメントありがとうございます。ねらいを汲んでいただきありがとうございます。あれはいわば文章の練習作でした(^_^;)コメントを書いていますのでいつかご覧になってくださいね。

投稿: KOZOU | 2009年8月12日 (水) 08時17分

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