« 私の好きな曲~『ツィゴイネルワイゼン』 | トップページ | 永遠の悲劇~『ハムレット』 »

2009年12月 4日 (金)

私の好きな作品~『あ・うん』

私の大好きな向田さんの作品で、ドラマだけでなく、映画も上映されましたね。私は例のごとくビデオにとってせりふを殆ど覚えるくらい観ました。

 昭和初期の山の手を舞台とした、製薬会社のサラリーマンの水田仙吉と親友の実業家門倉修造、門倉に慕われる仙吉の妻たみ、仙吉夫婦の一人娘さと子、門倉の愛を得られぬ妻の君子を中心とした、暗い昭和の支那事変前夜の人々の暮らしを描いています。

タイトルの「あ・うん」は、仙吉の父初太郎がこの二人をさして「神社Aunn002 を守っている狛犬の阿(あ)と吽(うん)だな」と評したことに由来しています。

 私は映画を観ていませんが、門倉役に高倉健さんはちょっとかっこ良すぎましたね。でも大人の恋、それも戦前がが舞台ともあって決して甘美なせりふなどなく、親友同士の門倉と水田、たみの妊娠を知って『男だったらオレにくれないか。』といわれた仙吉は大喜びする、『オレの子供が欲しいとさ、嬉しいね、涙が出たね。』とはしゃぐ仙吉に半ばあきれるたみ。生憎子供を流産してしまいますが、縁側に男2人でしょげかえるのを見て仙吉の父が『狛犬だな』とつぶやくのです。

 男の友情ともとれますが、門倉の妻君子は、たみの言うことなら何でもする、そして女遊びもする門倉に悲しみを隠せません。自分もこの3人の中に入りたい一身でさと子にお見合いの話を持ってきます。

そこでさと子にも淡い恋が訪れますが、たみは帝大出のエリートじゃ何かと大変だから断りましょうと決断。でも相手の石川は『僕のどこが嫌いなのですか?』とさと子のお琴の稽古の後に現れ、2人でカフェに入り、さと子は『私が断られたのだと思っていました。』と告白。それから何度も逢うようになりました、親には内緒で。

その間に門倉の愛人は妊娠し、君子には内緒で、たみのところで不安な気持ちを打ち明けるようになってました。女としてたみは『門倉さんに女の1人や2人いないほがおかしいですけどね。』などと笑って話していますが、本当のところ、どうだったのでしょう。君子に内緒
にしている気まずさやいたわりの気持ちがよく出ていると思いました。

ここからが面白いのです。君子はどこからか噂を耳にし、水田夫婦に詰め寄ります。『友達の細君に心を許し、男の友情ってそんなものですか?』そこで仙吉は『りんごでも出さないか。』とたみに言うと、君子は『りんごもりんごよ。あら、私、奥さんも奥さんよって言おうと
して・・・』たみは独り言のように『りんごもりんご』とつぶやくのです。ここにはたみの門倉への思いを噛み締めているように思えました。

そのうち、門倉の会社が倒産し、それをいち早く知らせたくて、水田家Aunn003_2を訪ねますが、仙吉が出張でいないことを知り、門倉は家にあがろうとしません。玄関先で『これでさっぱりした、これからも来ていいですか?』という門倉にたみは台所に走り、一升瓶とコップを持ってきてコップ一杯のお酒を勧めました。
『門倉さんは門倉さんだもの。私、嬉しいんです。いつでも来てください。』
ここに感動しない人はいないでしょうね。初めて口に出した愛のこもった会話だと思います。向田さんの作品は愛があふれています。でも野暮な言葉は使わない、そこで作品が生き生きとしてくるのだと思います。

 君子がたみに初めて弱みを見せるシーンがあります。『ここはお国 何百里~』と歌うシーンです。『ここに心は残れども~、私ここが大好き。』続けて歌うたみ。君子が『私もう、死にたい。』と静かに泣くのです。たみはそーっと台所に隠れました。君子がどんなに心を痛めていたのかがよく伝わってきて、この歌を時々口ずさんでいる時の私はなぜかいつも涙が出ます。
 小説では君子が自殺を図るということですが、生憎原作は読んでいないのでコメント出来ませんが・・・

『狛犬さん、あ、狛犬さん、うん』、これは男2人のことでもあり、水田夫婦のことでもある、門倉とのプラトニックもありながら、仙吉に献身的につくす、仙吉のことを最優先にするたみ・・・大人の愛ですね。

 

いつかDVDのセットを買いたいと思います。

 

|

« 私の好きな曲~『ツィゴイネルワイゼン』 | トップページ | 永遠の悲劇~『ハムレット』 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

Marunagaさん、ご訪問ありがとうございます。観ていませんでしたか、残念です。私にすれば勿体無いという思いです。本当にあの時期の大人の恋です。きっと読んだら登場人物一人一人がいとおしく思えてきますよ。向田さんの作品は善悪は正すことはあても人を悪者にしないんですよね。そこが心優しい作家さんだと感じる私です。いつかぜひ、Marunagaさんには読んで頂きたいです。
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月 9日 (水) 23時56分

いつもありがとうございます。
PCが元気になられたようで、良かったです(゚▽゚*)

昔の大人のドラマといった感じなのでしょうか。
TVで見た事も読んだ事もないのですが、よく聞く題名で、一度読んでみたい本の一つです(^^)。

投稿: Marunaga | 2009年12月 9日 (水) 19時01分

おはようございます。
天気はいいですが風が強いです。

とこさん、いつも読んでいただきコメント大変ありがとうございます。レスを書いていますのでいつかご覧になってください。
けしてとこさんにハッパをかけるつもりではありませんので(*^_^*)

投稿: KOZOU | 2009年12月 5日 (土) 07時57分

KOZOUさん、ご来訪ありがとうございます。そうですか、KOZOUさんが観た時は杉浦さんでしたか。私が観たのは小林薫さんでした。ほんとに最初は門倉さんが中心のような内容に見えて一番大人だったのは水田さんだったのですね。それにしても「友達の奥さんにいいなーと思ったこともあり」は困ったちゃんですね!でもその逆は私にもありましたね(笑)。とにかく向田作品は殆ど好きで、病的かもしれません。それから脚本家に目を向けるようになり、優れた方々のことを知るきっかけにもなりました。これからもいい脚本家を見つけたら書いてみようと思います。
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月 4日 (金) 07時18分

茶々君のご主人様、いつもありがとうございます。私はこよなく向田邦子さんが好きで、ホンとにお金をためてDVDBOXを買いたいほどなんですよ。
物のない時代昭和初期のこれぞ日本ぞと思わせるたたずまいが心を打ちます。父親に威厳のあったころ、それももうモノクロの世界なのでしょうか・・・
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月 4日 (金) 06時59分

おはようございます。
今日も寒いようですね。

あうん、高校の時でしたかね、テレビドラマで見ました。
フランキー堺さん、杉浦直樹さんでしたかね。
昔はこんな友情もあったかなーと。
友達の奥さんにいいなーと思ったこともあり(^_^;)
門倉の慕情がやはり切なかったですね。
そしてわたしは岸本佳世子のファンだったので、さと子の悲恋に泣いたですね(^_^;)
時代の雰囲気はよく出ていたと思います。
水田が大人でしたねー。
映画は門倉は健さんですか。
たしかにちょっともったいないような。
杉浦さんとちがい重厚な門倉だったのでしょうね。

投稿: KOZOU | 2009年12月 4日 (金) 06時52分

阿吽の呼吸っていいですよね。
あ~~~ん 言葉の始まりから
終わりまで、狛犬さんとか仁王像
などもすごく好きです。

ドラマの内容みていないですが、
これから無くなっていく
風景のように感じます。高倉健の
世界はモノトーンの世界になってきていますね。

投稿: 茶々 | 2009年12月 4日 (金) 05時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/528484/32481775

この記事へのトラックバック一覧です: 私の好きな作品~『あ・うん』:

« 私の好きな曲~『ツィゴイネルワイゼン』 | トップページ | 永遠の悲劇~『ハムレット』 »