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2009年12月13日 (日)

私の好きな音楽家~ドメニコ・スカルラッティ

 メロディを聞くと誰もが何処かで聞いている作曲家、スカルラッティ。Wikipediaによると同年にJ.S.バッハ、ヘンデルのバロック時代の代表的作曲家が生まれていますが、スカルラッティもその時代の鍵盤曲に新しい用法を取り入れた重要な作曲家なのです。
 マリア・マグダレーナ・バルバラ王女のために書かれた個性溢れるチェンバリズムが繰り広げられる555曲の練習曲が、そのテーマ性と展開によって後に「ソナタ」と呼ばれて親しまれています。

 スカルラッティは鍵盤作品の作曲者として有名ですが、それらはチェンバリズムを追求する明確な方向性が見出されるため、広く鍵盤楽器一般のためでなく、特別なもの以外はチェンバロで演奏する効果に限定されると言えます。
 鍵盤作品以外に、歌劇や宗教曲なども遺していますが、残念ながらあまり知られてはいません。

 ドメニコ・スカルラッティの音楽活動は、大きく2つの時期に分けて考えることができます。第1の時期は父アレッサンドロ・スカルラッティが亡くなる1725年、あるいは彼が妻を迎えるために帰国した1728年までとされます。
 この時期の彼の作品は、教会音楽やオペラ、室内カンタータが中心で、様式的には父アレッサンドロら当時のナポリ楽派の影響を強く留めており、オペラと宗教音楽の作曲家として活躍しています。
 第2の時期は1729年、ドメニコ・スカルラッティがスペインに移り住んだ年に始まるとされています。彼が残した550曲余りのチェンバロ・ソナタは、その大部分がこの時期に書かれたものと推定されています。ただし、それらのソナタは、イタリアで一般的であったトリオ・ソナタでもソロ・ソナタでも無伴奏ソナタでもない、通奏低音の書法からかけ離れた形式で書かれていました。
 
 ドメニコ・スカルラッティの真の創造的な仕事は、スペインでの第2期、そして560曲近く残されたこれらのソナタにこそあったと言って良いでしょう。スカルラッティ自身によって練習曲と呼ばれていた、これらの1楽章形式のソナタは、1738年に『Essercizi per Gravice
mbalo チェンバロ練習曲集』として30曲が出版されています。その後、40曲ほどがイギリスで出版されますが、残りの大部分は何冊かの手縞譜として後世に伝わったのでした。

 スラルラッティのソナタは、ウィーン古典派以降の他楽章形式のソナタとは違って、多少の例外はあるものの、ほとんどが単一楽章で単純な二部形式という構成になっています。でも、提示される2つの主題はしばしば対立する傾向にあり、様々な動機を組み合わせた、あたかもモザイク模様を見るような旋律の積み重ねは、表現や手法的には古典派前期のソナタのスタイルに近いものだと言えるでしょう。

 スカルラッティは、1729年に出版した『チェンバロ練習曲集』の序文に「これらの作品のうちに深刻な動機でなく、技術的な工夫をこそ見て欲しい」と記しています。彼のソナタは、確かに構成上の無駄を一切省いた極端にシンプルな楽曲ですが、その中に示された楽想の多様性には、目を見張るものがあるからです。

 そして、イベリア半島という、強くアラブの影響を受けた土地の音楽、ボレロやファンダンゴ、セギディーリャといった、民族色の濃いスペイン・ポルトガル特有のリズムや旋律の影響を、ソナタのあちらこちらに聴き取る事も可能でしょう。イベリア半島の民族音楽の刺激
があったからこそ、スカルラッティは独創的な仕事が出来たと言ってもよ良いのかもしれません。
 550曲余りのソナタは、その作品数が膨大であるがゆえに“玉石混淆”の様相を呈しています。けれど「珠玉」という形容が当てはまる作品もまた、数多く存在しているのです。

 ドメニコ・スカルラッティが残したソナタは、現在では職業ピアニストにとっては指慣らしやアンコール・ピースとして、ピアノの初学者にとっては練習曲として使用されています。これは、スカルラッティのソナタの中に、ピアノの演奏に必要な近代的な技法が追求されて
いるからでしょう。後世への影響はどうであったにしろ、『近代的鍵盤楽器奏法の父』とも呼ばれのももっともだと、ソナタを聴くたびに思わせられます。

 J.S.バッハの平均律とは全く性格を異にしていますが、それ故にこそ、J.S.バッハと比肩し得るほどの、後期バロック鍵盤音楽の貴重な財産のひとつとなっているのが、ドメニコ・スカルラッティのソナタ集なのです。

 時々、無償に聞きたくなる素晴らしく、優しく、それでいて力強い音楽です。

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コメント

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投稿: ray ban australia sale | 2015年7月 3日 (金) 15時31分

茶々君のご主人様、驚かせてごめんなさい。最近は1日おきか2日おきに書いていたので連日になった私がいけませんでした。この曲も本来チェンバロの曲で、チェンバロで聴いたらもっと素敵です。たまたまいい動画が無かったので、こうなっちゃいました。チェロもいいですね、大好きです。
 ところでボクシング始められたのですか?どこまでも探究心の強いご主人様には降参です。でも鼻の骨とか折らないで下さいね。歯を折っちゃうとかよき聞きますから・・・11回でやめて下さいね!といってもはまってしまうのではないかと心配です。もう、やんちゃなんだから!!なんて(笑)
ありがとうございました。

投稿: toko | 2009年12月16日 (水) 00時34分

あれ~~
この記事見逃していたけど・・・・
ソナタ、バロック、チェンバロ
言葉は知っているんですが実際には
まるでしらないのが現状なんです。

音楽は音痴が原因でどうもよくなかったです。
でも
あこがれだけは色々あるんです。
チェンバロの音色
好きです。

人間にとって音楽はとっても
大切な財産だなんて
あらためて
思いました。

ありがとうございました。

私ごとですが、棺桶リストのひとつに
ボクシングがありまして、昨日体験入学して
シャドーボクシング、リングでのミット打ち、
サンドバックなど初経験して入学してきました。

チケット会員なのでとりあえず11回やってみます。
とこさまも
ぜひ?

投稿: 茶々 | 2009年12月15日 (火) 07時51分

KOZOUさん、いつもありがとうございます。と書いたつもりが保存されていませんでしたね、ごめんなさい。今一眠りして起きたところです。観て見たら私のレスが無いにに気づき、最近、こういうこと、多いんです。確認もしているに・・・確認の保存を押していないのでしょうね・・・ぼーっとしている証拠ですね。スカルラッティは練習曲で知りました。ピアノが習えないので音楽の先生について少し練習しただけです。本来、チェンバロの曲が多いのですが、動画にいいチェンバロのがなかったので・・・でも気に入って頂けて嬉しいです。記事は殆ど抜粋という格好になってしまってお恥ずかしいです。私も人知れぬ人物にスポットを当ててみたくなった、これ、KJOZOUさんの影響かも。また他に誰もコメントを頂けなくて、ちょっとへこんでいます。ドンマイ、ドンマイ!!
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月13日 (日) 23時52分

こんばんわ。
今日は少し暖かいようです。

バロックは好きのなですがドメニコ・スカルラッティはあまり知りませんでした。
動画の曲とてもいいですね。
軽快でテンポもいいですね。
全然素人なのですが彼の言葉の「これらの作品のうちに深刻な動機でなく、技術的な工夫をこそ見て欲しい」というのは分かる気がしますね。
ほんとにそんな感じですね。
記事を読みますと大家ではないかも知れませんが、『近代的鍵盤楽器奏法の父』と呼ばれるように技術的に今に伝えるものが大きいのですね。
いずれにしろこうして何百年も曲が伝えられるわけですからすばらしいですね。
とこさんの音楽へのぞうけいがよくわかりました。

とこさん、いつも読んでいただきコメント大変ありがとうございます。レスを書いていますのでいつかご覧になってください。
「破船」は確かに怖い物語ですが同時に人間の生きる悲しみが底に流れていますね。吉村さんは若い頃結核で死線をさ迷い、作品はどうしても極限の人間を書いたものが多いですね。きれいごとは世にあふれていますのでこのようなできごとに光を当てた彼は尊敬します。

投稿: KOZOU | 2009年12月13日 (日) 07時48分

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