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2009年12月12日 (土)

懐かしの作品~『さらばテレビジョン』

 1978~80年の頃書かれたものなので、もう古書扱いでしょうか。倉本先生がまだ東京にいらっしゃて、せっせと脚本を書いては世に送り出していた頃、知り合った俳優さんのことや日記と題してエッセイを書かれたものです。倉本先生といえば『北の国から』が有名ですが、私はむしろ富良野に移住される前のせこせこした生活に中で書かれた「2丁目3番地」、「3丁目4番地」、「さよならお竜さん」、「ガラス細工の家」「前略おふくろ様」「ホンカンシリーズ」、単発のドラマで芸術祭参加作品などきりがなく、ドラマKuramoto も今と違って長期に渡って放送されれていました。

でももうテレビはおしまいだと言われた時期でもあります。今思えば、今よりずっといい作品が多かったし、バラエティなどはドリフターズやコント55号くらいしかいなかった、役者にスポットをあてられた私にとっては黄金期でした。

 本の冒頭に『6羽のかもめ』の最終回の言葉が載っています。

『テレビの於けるドラマの歴史はくさされっぱなしで終わったんだ。その通り!!テレビドラマに芸術はなかったさ!徹頭徹尾、芸術はなかったさ!俺の愛したテレビドラマは最後迄下等な娯楽品としてーー下品なーー悪趣味な代物だったさ。さらばスタジオ!さらば視聴率!そしてさらばテレビジョン!だがな、一つだけ言っておくこがある。(カメラのほうを指差す)あんた!テレビの仕事をしてきたくせに本気でテレビを愛さなかったあんた!(別を指差す)良くする事も考えずに批判ばかりしてたあんた!あんたたちにこれだけはいっておく!あんたたちは決してテレビを懐かしがってはいけない。あの頃はよかたなんて後になってそういうことだけは言うな。言う資格がない。
 懐かしむ資格のあるものはあの頃懸命にあの状況の中でテレビを愛し、闘った奴。それから楽しんでくれた視聴者たちーー』

  ドキッとする言葉で始まります。どれ程現場が荒れていたか創造を絶する言葉ですね。確かにそういう風潮があったことも思い出せます。
でも倉本先生や向田邦子さん、早坂暁さんなどが懸命にドラマに費やした日々でもあるのです。娯楽といってしまえばそうかもしれません。
 でも命のあるドラマでしたよね。芸術性がなかったかと問われるとKuramoto003 無いとはいえないと私は思うのです。ドラマを愛した人は確かにいたのです。

 私は本を読むきっかけはテレビだと言えるでしょう。それも好きだと思うドラマは殆ど倉本先生のものでした。向田邦子さんのように本と言う形で残っているとは知らず、書店でアルバイトをした時に多くの倉本作品にまた出会えた時の感激は今も覚えています。

 この作品では『心やさしき役者たち』という題でも数々の有名な役者さんとのエピソードも載っています。
 先日亡くなられた大原麗子嬢のことを読み直し、涙があふれました。飛行機が苦手な先生に、いつも優しく「麗子が守ってあげるからね。」と声をかけてくれた麗子さん。「私はこんなことでは死なない運命なんですって。」と無邪気に言っていた優しい微笑みが浮かびます。

 大滝秀二さんは北海道に入った瞬間からホンカンになりきってしまう、これも大滝さんらしいお話です。

 私は今まで「私の好きな俳優たち」と題していろんな俳優さんを取り上げてきましたが、元はと言えば、倉本先生の作品に出ている方が多かったように思います。倉本先生らしい優しい役をされたからなのでしょう。

 おかしかったのは、石坂浩二さんのエピソードでしょうか。何故か先生が付き添いで浅丘さんの家に行く車の道中で、石坂さんが何て言えばいいのかボソボソつぶやいているところ。
『頂きたいんです、頂かせてください、下さい、下さいな、変だな。頂戴させてください、頂戴させていただきたいンです、アアだめだ!!』これで石坂さんは先生に頭が上がらなくなったことでしょう。

まだお嬢さんだった仁科明子さんのお話も素敵です。

 この題の後にショートショートというかエッセイ風の読み物がついていて、今ある先生がどんな方だったのかを知るにはとてもいい本だと思います。富良野に来られたことは雑踏の中から自然に帰りたかった、自分を取り戻したかったという思いが強かったかもしれませんが、後を追うように著名人や作家さんが北海道付近に来られたことは何だか妙な気持ち
です。山田太一さんは「私は東京で頑張る」と言った言葉が頭をよぎります。

 

今また新しい脚本家さんが多く誕生し、向田邦子さんが亡くなられてから発足された向田邦子章を取る方々に大いに期待しています。いつまでもヒューマンドラマを愛して止まない私の願いです。

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コメント

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投稿: michelle may | 2016年7月 8日 (金) 15時02分

おりえさん、こんばんわ。あまりに古い作品で驚いたでしょう。私も就職するまではテレビっ子でした。でももういいよって感じで私の部屋だけ地デジじゃないので、観たいと思うものは観れないで、私の部屋のテレビは仕事しながら害にならない教育テレビをつけてます。私はPCでテレビまで観れちゃうと仕事が出来ないと言うデメリットがあるので、午前中は音楽を聞きながら、午後はテレビを聞きながら・・・でも最近の仕事はちょっと紛らわしいものなので音楽はまだしも、テレビはいかんです。気が散っちゃって。
 余計な話をまたしてしまいました。本当に良い環境になって欲しいと思います。
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月13日 (日) 02時30分

 私は自宅にテレビを置いていません。専らネットですね。もうネットてでほとんど足りるというか。
 でも以前はテレビっ子でしたね。本当に一日中テレビにかじりついていたような気がします。
 今と比べて昔は云々というのはアレなんですが、それでもやはり以前のテレビは面白かった。あの時期はお祭りだつたのかもしれません。

 今のテレビでは倉本先生も作品が書きづらいでしょうね。
 テレビ離れが叫ばれ現実視聴率も下がってきて、まあテレビがこのまま寂れるとは思いたくないですが、また良い環境が生まれてくれればなと思います。

投稿: おりえ | 2009年12月13日 (日) 00時48分

test

投稿: とこ | 2009年12月12日 (土) 23時25分

茶々君のご主人様、こんな記事にもお付き合い頂き、ありがとうございます。
 私も最近の番組では盛り上がれないので困っています。歳のせいでしょうか・・・だからつい昔の脚本家さんたちの作品を思い出してしまいます。
今でも良いドラマを書いている方もいらっしゃいますが、今のテレビを創る上の方のお考えなのでしょう。バラエティのほうが数字がとれると。そうだとしたら、悲しいですね。もう、ほんとにさらばテレビジョンなのかもしれません。
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月12日 (土) 13時55分

KOZOUさん、いつもありがとうございます。
本当に最近は観たい番組がなくなってきていますね。私も今のバラエティは何とかして欲しいと思います。いい作品はBSとかで観れるのでしょうが・・・
 倉本先生は随分と北海道のことに詳しくなられて塾もだんだん有名になっていき、遠い存在になってきたように思えたので、昔の本を引っ張りだしてなんとなく書きたくなってしまいました。私の原点なのかなとも思います。優しさについて再認識した気がしています。
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2009年12月12日 (土) 13時44分

なんだかとても
なつかしい名前がいっぱいですね。 

テレビにもたくさんのチャンネルが
出来て、インターネット動画やDVDなどなど
あの時代にきらめきを国民に
与えたドラマも、この豊富な情報のなかで
手に入れれるはずですけど、
あのときの盛り上がる感動を
得られないのはなぜか?

歳のせい? 作品のせい?それとも
いつでも観れる環境のせい?
最近ちょっと悩みます。

簡単なことには
涙もろくなっているのですけど・・・

投稿: 茶々 | 2009年12月12日 (土) 10時21分

あ、KOZOUでした(^_^;)

投稿: KOZOU | 2009年12月12日 (土) 09時37分

おはようございます。
いい天気です。

倉本さん富良野に行かれて塾もつくられたのですよね。
北の国からはよかったですね。懐かしいです。あとは見たと思うのですがあまり覚えがないですね。というかあまり脚本家に目がいかず、わたしも「テレビドラマ」という頭があったのだと思います。
6羽のカモメの最終回の言葉、強烈ですね。彼のテレビドラマにかける矜持があふれていますね。
向田さんのは好きでしたね。小説になったもので接したのが多かったですけれど。早坂さんは「夢千代日記」が忘れられません。小百合ちゃんの最高の時でしたね。
石坂さんのエピソードはおもしろいですね。
かわいいところがあるのですね(*^_^*)
大原さんも優しかったのですね。
確かに今のドラマはあまり見る気はしないですね。
じっくり見ればいいのもあるのでしょうけれど。
ただやはりバラエティのくだらなさは何とかしてほしいですね(^_^;)

投稿: | 2009年12月12日 (土) 09時31分

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