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2010年1月25日 (月)

『悪魔の手毬唄』

 私は横溝正史氏の作品の中で、一番好きな映画でした。

 あらすじは、古い因襲に縛られ、文明社会から隔離された岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村(オニコベムラ)。青池歌名雄は、葡萄酒工場にAkuma004 勤める青年。歌名雄には、由良泰子という恋人がおり、仁礼文子もまた、歌名雄が好きであった。

この由良家と仁礼家は、昔から村を二分する二大勢力であった。しかし、二十年前に、恩田という詐欺師にだまされ、それ以来由良家の、勢いはとまってしまい、逆に仁礼家が前にもまして強くなった。その時、亀の湯の源治郎、つまり歌名雄の父親が判別のつかない死体でみつかった。この事件を今も自分の執念で追いかけているのがあの磯川警部。

 磯川は、ナゾをとくために、金田一耕助に調査を依頼する。金田一は、最初に恩田と特にかかわりがあった多々良放庵に会う。その頃、村では大騒ぎ。というのも、別所千恵が、今では人気歌手・大空ゆかりとなり、今日はその千恵の里帰りの日であった。その晩、千恵の歓迎会の時に、第一の殺人事件が起きた。泰子が何者かによって殺されたのだった。そして、泰子の通夜の晩、葡萄工場の発酵タンクの中に吊り下げられて死んでいる文子を発見。

この二つの殺人事件には、この地方につたわる、手毬唄の通りに行なわれていることを金田一は発見。そして、文子の通夜の晩、犯人は、千恵に入れかわっている里子を殺してしまう。

この犯人は、青池リカで、里子は、母親が犯人であることを知り、千恵の身がわりになったのである。
 金田一の捜査により、恩田と源次郎は同一人物であることがわかる。そして、恩田=源次郎は、千恵、泰子、文子の実の父親であった。
 リカは、それらの娘たちと血のつながる歌名雄をいっしょにできないと思い娘たちを殺してしまったのである。(goo映画より)

 手毬唄になぞらえて起きる殺人事件。

金田一さんが調べるまで、恩田という詐欺師が3人の娘の父親であり、歌名雄の父親でもあることに気づかなかった、これは相当念入りな詐欺行為であり、無責任極まりない行為であると言っていいと思います。リカも真実を知らなければ殺人など起こす必要が無かったのです。現代のドラマや映画でも、愛し合っている2人が実は兄妹の間柄であって苦しむと言うセッティングはよくあり、その先駆けとなったものと思われます。

事件の背景に存在する複雑な人間模様に重点を置いたストーリーは、人間ドラマ的な深みが感じらます。

 我が娘を間違って殺めたこと、母親にこれ以上犯罪を犯してもらい たくない、私はどうせ陰の身なのだから・・・里子は顔の片面にあざがあり、いつもずきんをまとっていました。可愛そうな生い立ちにリカは余計に苦しんだことでしょう。

 こんなことになったのも恩田と言う詐欺師のせいなのに、リカは最後まで、恩田のことを愛していたのです。

「心底夫を憎めたらこないなことにはならなんだ。むごい人とはわかっても好きやった。忘れられませんのや・・・。」Akuma002

 過去に縛られながら生きる女主人リカ。彼女の心中を察すると、この結末は泣かされます。そして、彼女を見守るように20年間も捜査を続ける磯川警部も・・・演じる若山富三郎氏が良い味を出しています。

湖に入っていき自殺を図ろうとするリカ。そのシーンも市川監督により、美しく映りだされます。
 
この作品の根底にあるのは『愛』だったのではないでしょうか。リカは誰も憎んで殺めたのではいなかったのです。
 
 この映画で、「人を恨むのは簡単だけれど、愛してしまった感情を簡単に変えることは出来ないのだ」ということを深く考えさせられました。

 そうですよね、私もきっと同じように苦しむのだろうと思います。愛想を尽かすのは簡単かもしれませんが、ひとたび愛してしまったらそれは呪縛のように払いのけようとして払えるものではない、昭和初期の女性像がそこに垣間見れた気がします。

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コメント

しのぶさん、こんばんわ。
何度も足を運んで頂き、光栄です。しのぶさんのコメントは実に的を得てらっしゃるので私の言う事無くなってしまいます。

 しのぶさんは一行さんですか、長かったですものね、シリーズが。私も主題歌が流れる度に『あ~観たいけど、怖い!!」と慄いていましたが、映画で解らなかった部分の描写がテレビだと実にはっきりしていたりして気付かされることしばし。

 しのぶさんの小説もかなりハードですよよね、まだ全部読めなくてコメントできずにごめんなさい。ちょっと私には刺激が強いかな。
 こんな中途半端な私に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。

投稿: とこ | 2010年1月27日 (水) 00時40分

 こんにちは。
 金田一は古谷一行で決まりです。(笑)

 横溝作品は、やはり文章描写のイメージを絵にしたような美しさにすばらしさを感じます。

 意味不明な犯罪が~とコメントで見かけましたが、それはわたくしも同感で、そういった犯罪が増える要因の一つには、こうしたイメージの膨らみにかけた現代の世相が反映してしまっているのだと思います。

 せめて小説の世界では~ともありますが、小説だからこそすべての事象に意味を持たせていきたいものですよね。
 
 金田一……レンタルショップにいってこようかしら。( *´艸`)
 

投稿: 酒井しのぶ | 2010年1月26日 (火) 14時02分

茶々君のご主人様、こんにちわ。
お~~、横溝シリーズ好きですかあ?嬉しいです。
本当に愛憎劇と推理劇という点でがこれ以上の作家さんはいないと言えると、私も思います。今もリメイクされていろんな方が金田一さんをやっていますが、ご主人様は誰の金田一さんがお好きですか?私はやっぱり石坂浩二さんか古谷一行さんですね。でも本を読んでいると、決してスマートなカッコイイ人ではなく、一度、渥美清さんがなされたことがあるそうで、そちらのほうがぴったりかも。
 おっしゃるように「現在の意味不明な殺人とはまったく異なっていることですね。犯罪の質もひどくなりました。」そうですね。せめて映画や小説の世界では意味不明な殺人はおきてほしくないです。謎解きを楽しむ純粋な作品、これからも期待したいです。
 ありがとうございました。

投稿: とこ | 2010年1月26日 (火) 11時58分

スイーツマンさん、こんにちわ。
そうですか、あまり推理物はお読みにならないでですね。
でもスイーツマンさんの作品をよんでいると日本ではなく、外国のアガサ・クリスティーやコナン・ドイルの世界を思い起こさせてくれて楽しいですよ。
横溝氏の作品はとっても犯人のわかりにくいものとそうでないものとがあり、でも本で読むとつい系図なんか描きながら推理していたものです。映画のほうが配役や監督が良かったからかいろんなシーンが心にのこりましたが。

「推理」を外せば「小説」にならなければいけない、そうなのですかね・・・難しい命題、ありがとうございました!!

投稿: とこ | 2010年1月26日 (火) 11時41分

お~~~
横溝作品ですね。あのおどろおどろした作品群は
好きです。市川今監督の映像もよかったですね。
殺意にはおどろきがありましたが、母親の子供への
愛など心情的にはどれも理解ができるものでした。
謎解きが中心ですが、とっても衝撃的な映像美
で役者さんも良かったです。現在劇では表現できない
世界ですね。

密室殺人とかトリックに関するパズルものは
ずいぶん好きですよ。ネタばかりで作品のふくらみは
全部カットですが・・・

話がそれましたが、言えるのは
現在の意味不明な殺人とはまったく異なってい
ることですね。犯罪の質もひどくなりました。

投稿: 茶々 | 2010年1月26日 (火) 09時24分

私は一応推理もののようなものをブログに掲載していますけれど、作家様がたの作品をさほどよんでいない。と思ってました。----といいんがら、考えてみたら金田一シリーズって、全部観てたんですね。はるか昔ですけれど。

私も、
「推理」を外せば「小説」にならなければいけない
と考えるくちです。

投稿: 狼皮のスイーツマン | 2010年1月26日 (火) 06時56分

KOZOUさん、こんばんわ。
一番乗りでしたね。嬉しいです。
何だか映画づいちゃって、脳がありませんが・・・私も金田一耕介シリーズはテレビを含め、殆ど観てますが、警部が若山富三郎だったことやリカが岸恵子だったのも良かったのだと思います。
犯人は割りりと早く解ってしまいますけど、横溝作品は犯人を突き止める面白さより、何かに縛られえた過去だったり、因習だったり、遠くない昔の日本を市川監督によって美しく、そしておぞましく映し出されているので好きです。大抵女性が犯人ですが、それも物悲しいです。
 KOZOUさんも観ていたなんてちょっとびっくりしました。
その後の磯部警部とリカさんがどうなったのか少し気がかりです。
 ところで、KOZOUさんのブログで観たサントリー・レッドのCM,市川監督のもとで撮られていたこと、ご存知でしたか?全部かどうかはわかりませんが、「男と女じゃ男が悪い」と男性の語りがあって、「すこーし、愛して。ながーく愛して」と麗子さんの語りが続く、シリーズです。どうりで凝っているし、色の感じが市川監督っぽいですよね。大好きでした、あのシリーズのCM。話がそれてすみません。
 
 でも市川氏をここまでした功績の一つの横溝作品があったことは否定できないですよね。

投稿: とこ | 2010年1月26日 (火) 01時16分

こんばんわ。

横溝正史ほんとに懐かしいですねー。
一時はものすごいブームでしたね。
最初が犬神家の一族、わくわくしたものです。
たいてい見たのですが一つ一つはあまり思い出せないですね(^_^;)
中国地方の山村、どろどろした血の宿命、旧家の対立、そして古い歌とか手まり歌がからみ、磯川警部もなつかしいですね。村の名前も鬼首村とか曰くありげで。
悪魔の手鞠歌、記事を読んで少し思い出しました。似たような設定でこんがらがるところもありますね(^_^;)
「心底夫を憎めたらこないなことにはならなんだ。むごい人とはわかっても好きやった。忘れられませんのや・・・。」横溝ワールドの女性の言葉らしいですね。
最後の入水シーン思い出します。確かに美しかったです。さすが市川監督だったような。
わたしのオヤジの里は田舎で小さいころよく行っていましたが、なんか雰囲気似ていそうな(^_^;)
昔の日本の因習、建前しかし裏は相当のどろどろ、横溝さんはその辺はよく描いていると思います。
その点北海道は新世界、過去のぐじゃぐじゃの因習が残っていないでしょうからちょっとあこがれますね。

投稿: KOZOU | 2010年1月25日 (月) 23時19分

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